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茄子なす

旬のもの 2022.05.01

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こんにちは。料理人の川口屋薫です。

新緑に溢れ、風薫る季節になりました。時折夏のような暑い日のある5月です。

そんな日には、自然と涼感のある食べ物が次々と浮かんできます。ジェラート、冷やしぜんざい、ざるそば…。
そして、今日のお話『茄子』も、胡瓜やトマトと同じように身体をクールダウンしてくれる野菜です。

茄子の旬は夏ですが、初夏にあたる5月〜7月頃でも市場の供給量は安定していて、食べたくなる頃には優しい価格で手に入りやすいよう調整されています。

私は以前、大阪市中央卸売市場本場の仲卸に勤めていたのですが、そこで働くことを決めた理由は、まだ知らない日本全国の野菜を勉強してから野菜と料理の仕事をするためでした。
その中でも茄子は、都道府県ごとに伝統茄子やブランド茄子がある多種多様な野菜であることを知りました。

例えば、熊本県だけでも3種類あり、全て生食できる茄子です。赤茄子は煮るとトロトロになりトロ茄子とも呼ばれています。焼くとお菓子のような甘い香りがしてきます。
長さ40cm以上ある植木茄子(大長茄子)は、丸ごと焼き茄子にすると迫力満点です。
逆に小さなばってん茄子は長さ7cmほどで、糖度が高く梨のような甘さで、天ぷらにすると小さな実からほとばしるジューシーさに舌鼓を打つ味わいです。

写真提供:川口屋薫

また、今日のレシピでご紹介する大阪の「水茄子」も生食できる伝統茄子です。
大阪生まれの私でさえこの水茄子の存在を大人になってから知ったのですが、きっかけはある一つのエピソードでした。

写真提供:川口屋薫

私が勤めていた仲卸の先代の社長は、この水茄子を「全国で必ず喜んで貰える」と確信して、東京の市場に送り続けたそうです。とは言え、茄子はこれまで煮たり焼いたりと火を通して食べてきたもの。生で食べることに馴染みのない人たちにとって、買うのは勇気が要りハードルが高かったそうです。
結果、最初は全く売れず毎月数百万の大赤字だったそうですが、試しに買ったお客さんから、「美味しかった」と口コミが広がり徐々に評判になりました。今では漬物茄子で有名な水茄子として全国的に認知されるようになりました。

水茄子の魅力にいち早く気づき、当たり前のように食卓に並ぶ文化をつくってくれたことの大きさとありがたさ。退職してから数年経った今も、水茄子を見るたびに思い出すエピソードです。

最後に、茄子の色についてお話したいと思います。
読者の皆様は、暦生活の「にっぽんのいろ」でご存知の方々もいらっしゃると思いますが「茄子紺」という色があります。深く美しい紫は、平安時代貴族では、特級階級を持つ人のみ、紫色の衣を着ることができたそうです。

奈良時代に日本に伝わった茄子は当時の人には高貴な野菜に見えたかもしれません。江戸時代には、徳川家康が茄子好きで、栽培を広めたそうです。家康だけでなく江戸時代の人達も、味も然り色にも魅せられたかもしれません。

さて今回は、水茄子の旨みをたっぷり引き出すレシピをご紹介します。

水茄子のチーズ焼き

写真提供:川口屋薫

材料(2人前)

•水茄子 2個
•粉チーズ お好みの量
•ニンニクスライス 2枚
•オリーブオイル 大さじ2
•ケチャップ 大さじ1
•塩 少々

写真提供:川口屋薫

作り方

①水茄子は洗って水気を拭き取り、縦切りで3等分にします。
②フライパンにニンニクとオリーブオイルオリーブオイル大さじ1を入れ、弱火で温めてから、水茄子を入れます。
③中火で約3分、水茄子に焼き色がついたらひっくり返して、さらに2、3分焼きます。
④表に粉チーズをお好みの量を乗せて、再度ひっくり返して、弱火で1分焼いたら完成です。
ケチャップをフライパンで軽く水分を飛ばすと、濃厚な味になります。お好みで塩を少々振りかけてください。

写真提供:川口屋薫
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川口屋薫

料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁

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