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潤い不足には白い食べ物を

旬のもの 2022.10.30

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この原稿をかいている日は10月初頭。まだまだ昼間は30℃近くにもなる日もありますが、朝夕の空気はだいぶひんやりしてきました。日中も暑い日はありますが、むしむしの湿度が無いだけでだいぶ楽に感じます。ただ、湿度がさがることで、負担も出てきます。それは乾燥です。中医学では、この秋の時期の養生は「潤いを守る」ことにあると考えます。

中医学の古典、『黄帝内経(こうていだいけい)』では、“この季節には鳥の寝起きのように早く寝て早く起きることが大事であり、心を安らかにして精神を落ち着かせ、秋の気が体を損なうことのないように、やたらと動き回って肺を冷やさないように過ごす。これが秋の季節に調和した養生である”とあります。

肺は西洋医学では、呼吸により血中の酸素と二酸化炭素の交換を行う場所とされていますが、中医学でいう五臓の「肺」は、呼吸によって大気中のエネルギーを体に取り入れ、身体中に水分を巡らせる働きを持つ場所と考えられています。肺はまた、皮膚や粘膜とも関係が深く、体の防衛の最前線として働いています。ですが、肺は五臓で唯一外気と接するため、乾燥や冷たい空気に弱く、環境や天候の変化によるダメージを受けやすい臓です。

肺が弱るとエネルギーがうまく作られず、疲れやすくなり、病気への抵抗力が低下すると同時に、肌や体内の乾燥が見られるようになり、便秘なども出やすくなります。肺はまた、悲しみの感情と関わりが深いので、肺が弱りやすい秋には、感傷的になったり、情緒が不安定になったりして落ち込みやすくなる方も増えます。

肺を元気に保つには、まず乾燥と冷えから守ることが大切です。肌の保湿はもちろん、直接冷たい乾いた風に素肌をさらさないように気をつけましょう。空気の乾燥がひどい場合は、加湿器なども積極的に使いましょう。

潤いを補う際の注意点ですが、中医学の考えでは過剰な水分は胃腸を弱らせ、消化吸収力が低下すると考えるので、水分のとりすぎは潤いを飲食物から作ることができず、余計に乾燥が進んでしまいます。体内の潤いである体液は単に水からできているだけではなく、飲食物から消化吸収された様々な養分の集合体です。潤いは食べて補うことを意識してください。

潤いを補う食材には、山芋、豆腐、松の実、豆乳、豚肉、白菜、白ごま、梨、白きくらげ、イカ、百合根などがあります。お気づきになった方もいらっしゃると思いますが、潤いを補う食材には白いものが多いんです。なので、潤いを補うには白い食材を積極的にとることがよいということを覚えておいてください。肺の良い状態を保つためには、潤い補給食材に加え、少し辛味を足すと良いでしょう。少しなので激辛は避けてください。白い潤い食材に加えて、玉ねぎ、ネギ、少量の生姜、にんにく、銀杏などを日々のメニューに少し加えましょう。

この時期、気をつけたいのは発汗です。発汗とは体の潤いを失うことですので、体にとっては消耗です。乾燥の季節である秋から冬に汗をかきすぎることは、体力の消耗にも繋がります。最近サウナが流行っていますが、気をつけてください。特に体の潤いが足りていない陰虚証(いんきょしょう)の方(喉が渇きやすく、手のひらや足の裏が熱い、寝汗をよくかく、微熱っぽい、ヤセ型、便秘やコロコロ便、舌は赤くて、小さく、表面が乾いており苔が無い。全体にヒビが入っているなどが見られる方)は、過度な発汗はおすすめしません。同じく長風呂、ホットヨガ、岩盤浴/溶岩浴なども過度にならないよう、気をつけてくださいね。

秋は、食べ物も美味しく、過ごしやすい季節ですので、しっかり食べて寝ることで心と身体を整えやすい季節です。美味しく食べて、早く寝て、しっかり深呼吸して、体にエネルギーを巡らせ、厳しい冬の寒さに備えておきましょう。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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