4月も半ばを過ぎました。日中は長袖を着ていると汗ばむほどのちょうどいい気候が続きますね。新緑も芽吹きはじめ、山々はキラキラと輝きを増しています。
この時期、そんな新緑に負けないくらいの華やかさで私たちを楽しませてくれるのが「藤の花」です。シャワーが降り注いだかのように咲く藤の花は、幻想的な雰囲気たっぷりに、初夏の訪れを告げてくれます。
藤の花は、4月中旬から5月上旬頃に長い穂のような花序を垂れ下げて咲く、つる性の花木です。桜が終わって、梅が青い実をつけはじめる頃にちょうど満開を迎えます。
藤の花が観賞できるスポットは全国に色々ありますが、なかでも思わず「お見事!」と拍手したくなるのが奈良県春日大社にある「砂ずりの藤」です。
本殿の回廊、慶賀門を入ったところにある立派な藤棚で、5月初旬頃に花を咲かせます。毎年花の穂が1m以上にもなり、地面の砂に「すれそうになる」ほど伸びることから、この名前が付けられたといわれています。
砂ずりの藤は、鎌倉時代後期に描かれた絵巻物『春日権現記』にその存在が記されています。摂関近衛家から献木されたという藤は、樹齢700年以上の古木となって今でも多くの参拝者を楽しませています。
そもそも春日大社は「藤」にゆかりのある神社としても有名です。
「藤原氏」の氏神であることから、社紋にも「下り藤(藤の紋様)」が使われていますし、境内のいたるところに古くから自生した「山藤」がたくさん咲いています。御巫の簪(かんざし)や春日若宮おん祭の「日使(ひのつかい)」の冠にも藤の造花が見られるほど「藤」づくしの神社なのです。
私が初めて「砂ずりの藤」を見たのは、2020年の5月でした。関東から奈良へ移住したての頃で、春日大社は休日のランニングコース。何も知らずにいつも通り行き、お参りしようと門をくぐったらこんな光景が広がっていました。
まだ咲きたてだったのか、地面につくほどの長さにはなっていませんでしたが、それはそれはきれいな藤でした。
この日は早朝だったので、ほぼ独り占め状態。近づいて見たり、遠くから見たり、座ったり背伸びして見たりと色々な角度から楽しみました。
そうしてふと、ある角度から見たときにパァッと光がさしてきたのです。
淡い紫色の花々が光に照らされて、柔らかな表情で佇んでいる。
自然から生まれたもの、人間がつくったもの。
それらが一体となって調和したように見えた瞬間でした。
花も神社もなにも語らないけれど、「答え」ってこういうことなのかもしれないなぁ..と。
悶々と悩む日々がゆっくりと溶けていくような気持ちになりました。
今年は去年より、少しだけ成長していますようにと願いを込めながら、「砂ずりの藤」を拝みたいなと思います。
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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