まだまだ茹だるような暑い日が続いていますが、ようやくお盆の時期を迎えて、故郷に帰省されている方も多いことと思います。今回ご紹介するのは、精進料理の材料にもよく使われる「かんぴょう」。甘く煮たかんぴょうは、太巻き寿司にも欠かせない具材ですね。
今回は、梅雨明けからお盆にかけて、生産のピークを迎えるという、滋賀県の「水口かんぴょう」をご紹介します。

滋賀県の南東部に位置する甲賀市水口町は、かつて東海道五十三次のうち、江戸の日本橋から数えて50番目の宿場「水口宿」として栄えました。1843年には、宿場町に家が692軒、本陣、脇本陣が1軒ずつと旅籠が41軒もあったといいます。
古くから、かんぴょうの産地として知られており、江戸時代の浮世絵師・歌川広重が描いた『東海道五十三次』にも、街道沿いで輪切りにした夕顔をくるくると剥いたかんぴょうを竿に干す女性たちが描かれているほど。一説には、現在、日本一のかんぴょうの産地である栃木県へも、ここ水口からかんぴょうが伝わったそうですよ。

そんな水口町でも、近年はかんぴょうの生産者が減少し、担い手不足が深刻になっているそうです。今回は、地元で熱心に昔ながらの「無漂白・天日干し」の伝統製法でかんぴょう作りに励む生産者さんを訪ねました。
かんぴょうの原料となる夕顔の実は、コロリと丸く可愛らしい姿ながらも、その大きさは直径約30センチにもなります。天気の良い日の早朝、ちょうど良いサイズまで育った夕顔の実を収穫し、専用の機械にセットして剥いていきます。

鉋をかけるように、シュルシュルと音を立てて剥かれていく真っ白な夕顔の実。この作業は、思わず目を見張るほどの早業でした。夕顔の実ひとつからは、5mほどのかんぴょうが5本取れるそうです。

剥いたかんぴょうはすぐに竿にかけて、簾のように天日干しにしていきます。真夏の日差しを一身に受けて、天気が良ければ1日半ほどで乾燥作業は完了。ギュギュッと乾燥したかんぴょうは、もともと幅3cm厚み3mmほどあったものが、幅1cm厚み1mmほどにまで縮まるのだそう。

正直なところ、食材としては地味なイメージのあるかんぴょう。食べ方といえば巻き寿司やちらし寿司くらいしかイメージが湧かないという方も多いかも知れません。確かに、お寿司は定番の食べ方ですね。でもそれだけではありません。やわらかく戻して含め煮にしたり、味噌汁の実にしたり、炒め物にも意外と合うのです。地元では、かんぴょうを剥いたあとに残る、夕顔のワタの部分も残さず食べるそう。なめらかな食感や優しい甘みは、乾物のかんぴょうとはまた違った魅力がありました。
江戸時代から、宿場町を行き来する旅人の舌を唸らせてきた「水口かんぴょう」。乾物のストックに加えてみてはいかがでしょうか。
取材協力:甲賀市シルバー人材センター
写真提供:清絢

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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