こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「おむすび」についてのお話です。
日本人のソウルフードといえば「おむすび」だろう。ご飯を成形して、海苔でつつんだ日本の食べもの。梅干しや昆布をはじめ、和にとどまらず様々な具材でバリエーション豊かに展開されている。今やコンビニでは必ず並び、最近はおむすび専門店も増えてきてブームにもなるほど、愛されている。
私たちの主食なだけに、子どもの頃の遠足や運動会など、人それぞれに思い出がある。家庭によって作られるおにぎりも様々だったのではないだろうか。
私の母は、お弁当の日に時々おむすびを作ってくれた。お昼に食べるおむすびも好きだが、何より嬉しいのは、その日の朝にだけ食べられる、作りたてのおむすびだ。
母のおむすびは俵型に卓上味付け海苔を巻いている。塩味の効いたホカホカの白米に、甘くてパリパリの海苔が頬張れるのは、出来立てだからこその贅沢。
大きさは母の手の感覚次第。水で濡らした手に、アツアツのお米を乗っけてパパッと手際よく握っていく。子どもながらに真似してみるものの、熱すぎて到底おにぎりの形にすることができない。「母の手は一体どうなっているんだ」と驚きながら、ラップおにぎりを作るのが精一杯だった。
今でも鮮明に母のおむすびのあたたかさや、食感などが思い起こされる。一緒に出してくれた卵焼きの味まで蘇ってくるほど、懐かしい思い出の味だ。
私も夫のお弁当におむすびを入れることもあるが、我が家ではお弁当箱に詰めた後に余った白米がおむすびになることが多い。
作り方も母とは少し違う。母は自分の手ひとつで握るのが上手だったが、私はまな板とお椀を使っている。
まずはまな板を水で軽く濡らしておく。小さなお椀に、ふんわり白米を盛ったら、よそったごはんをそのまま逆さに返してまな板へ1杯分ずつ盛っていく。
こうすると、お米をまな板に盛っている間に、良い加減に粗熱が取れる。手に少量の水とひとつまみほどの塩を両手のひらになじませて、白米をすくい取ってかたちを整えていく。握り加減はお米一粒一粒をつなげるようにやさしく。空気を含むようにふんわりと作ると、おむすびはいっそう美味しくなる。
出来上がったおむすびは、その日のうちに食べるものは冷蔵庫へ。残りはラップで包み冷凍庫に入れておく。こうしておくと「余ったお米」だったものが「おむすび」という名の料理になるのだ。
おむすびにしておくと、つい手が伸びて食べたくなってしまう。いつの間にか夫がつまんで無くなっていることも。冷凍しておいたおむすびも、ただ包んでおいた白米より美味しそうにみえるのは、私だけだろうか。
とてもシンプルな料理だが、日本人に愛され作られつづける「おむすび」。私たちはおむすびに包み込められた作り手の気配や、思い出などの情緒的な美味しさまでも味わっているのかもしれない。
庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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