例年よりも梅雨入りは遅れましたが、今年も雨の季節がやってきました。
ジメジメとした梅雨の晴れ間に、鮮やかな姿を見せてくれるのが山桃の果実です。
観賞用の品種が庭木や街路樹としてもよく植えられていますので、綺麗な実を眺めたことがある方も多いかもしれません。
日本の山野に自生している山桃は、ちょうど梅雨時に熟し、果実は美しい紅色に。熟れるとさらに色濃く、赤紫色に変化します。
コロコロと丸く可愛らしい実で、思わず摘み取って食べてみたくなるほど。
生のまま食べると、独特な歯ざわりに甘酸っぱくてほんのり野性味が残る味わい。
いわゆる「桃」の芳醇な香りや味とは違った、自然のままの風味が魅力です。
とはいえ、山桃は痛みやすく保存が効かないため、産地以外ではなかなか出合うことも食べる機会もありませんよね。
日本では古くから食用にされてきたようで、縄文時代初期の遺跡から種が出土しています。文献では、『出雲国風土記』(733年)に「楊梅(山桃の漢名)」の名前が見えますし、『延喜式』(927年)には、諸国から朝廷に山桃が献上されたことが記されています。昔は乾燥させるなどして、保存したのでしょうか。
江戸時代の『大和本草』(1709年)には、単に甘い果実として食べるだけでなく、塩漬けにした山桃を食べれば、去痰の効果や吐き気を止める効果もあると、その薬効が記されています。
また、山桃の木の皮は、「楊梅皮(ようばいひ)」という生薬になり、さらには染料としても用いられました。
数多くの和歌にも詠まれており、日本人には馴染み深いフルーツであったようです。
そんな山桃の旬は、とっても短く、6月下旬のたった2週間。そして梅雨の真っ只中です。
山桃の農家さんでは、梅雨の中休みの短い晴れ間に大急ぎで収穫を行うのだとか。
日本の山桃生産量の8割以上を占める一大産地は徳島県で、山桃は「県の木」にも指定されているほどです。
県内では、大粒で酸味が弱く甘い果汁が豊かな「森口」や、大正時代に中国から導入された酸味が強めの「瑞光」といった品種が栽培されています。
地方発送をしてくれるところもあるので、今年はぜひ、山桃の甘酸っぱい味わいで、季節を感じてみてはいかがでしょうか。
清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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