イライラ。厄介な感情の一つですね。もちろんイライラした経験が無い!なんて方はいらっしゃらないと思います。このイライラで、人生がうまくいくことは少ないでしょうが、人生が狂う人は、いるかも知れません。そんな感情、無くていいんですが、あってしまいます。なぜでしょう。
イライラは、脳内の神経伝達物質や神経系の活動によって引き起こされると考えられています。ストレスや不安が増すと、自律神経の“交感神経”が活性化します。交感神経は、「戦闘か逃走の反応」を引き起こす神経なので、アクセルとブレーキでいえばアクセルです。体を興奮状態にもっていくことで、すぐに動けるように準備します。その興奮が“イライラ状態”と精神では認識されるのです。

ストレスによって交感神経のスイッチが入り興奮状態になるからイライラと認識される。というのが西洋医学的解釈です。
では中医学ではどう考えるのか、説明してみます。
中医学では、人体の気(エネルギー)がスムーズに流れていないと、イライラすると考えます。気は体内を血流のように巡り、各臓器や器官を正常に働かせています。中医学では、肝に怒り、心に喜び、肺に悲しみなど、臓腑に精神が宿ると考えるので、気の流れが滞り、栄養やエネルギーが十分にそれら臓腑に届かないと、感情が不安定になり、外部からの刺激に敏感に反応しやすくなります。

この気は、五臓の肝によって主にその流れをコントールされています。肝はストレスの受け皿となる場所ですが、継続的にストレスを受け続けると、肝の気を巡らせる機能が低下し、気の巡りが滞り怒りや鬱々とした思考状態になってしまうのです。
肝はまた、血を貯蔵する臓器と中医学では考えます。血は栄養を運ぶほか、精神の安定にも関与しています。血が十分にないと肝に栄養がいかず肝の気を巡らせる機能が低下するばかりか、不安感も強くなります。そして、不安だからイライラするということもよく見られます。
血が足りなくなるのは、胃腸を壊している、食べ物が悪いなどで、血が十分に作れていないか、夜ふかし、目や頭をたくさん使う、出血などによって消耗しすぎたかのどちらかが考えられます。

もう一つ、体内の体液(血液や体の水分)が不足するとイライラや不安感が増すと中医学では考えます。体液が不足するというのは、冷却水が足りない状態ですので、すぐカッとなり感情に火がつきやすくなります。
加えて、天候の変化、環境の変化、食生活の乱れ、生活リズムの乱れなどもイライラの原因となることがあります。暑い夏場はどうしてもイライラカッカしやすくなりますし、陽気が高まり、環境変化が多い春にもストレスがかかりやすく、イライラしやすくなります。

イライラは、①気の回りの停滞、②肝の不調、③陰(潤い成分)や血の不足からなると考えるので、気の回りを良くしたり、肝の不調を整えたり、陰や血を増やすことが対策になります。
①の場合は、イライラだけでなく、落ち込みや鬱々などもみられ、アップダウンが激しくなります。加えて、お腹が張る、ガスがたまる、下痢と便秘を繰り返すなどもよく見られるので、その場合は、足の太衝のツボを押してみてください。ここは自律神経系を整える働きがあるので、興奮している時は効果的です。
また、適度な運動は気の流れを促進し、ストレスを解消する助けになります。気の巡りの改善には、ウォーキングやヨガ、太極拳、ゆるい水泳などの穏やかな運動がおすすめです。加えて、気を巡らせるしそ、玉ねぎ、ピーマン、柑橘類、ライチなどを積極的に摂りましょう。

②の場合は、まず弱った肝への負荷を減らすことが大切です。肝はゆるい環境、落ち着いた状態を好みますので、深呼吸して、ストレッチして、お風呂に入って、早寝しましょう。後は、イワシ、牛すじ、豚レバー、鶏レバー、ぶどう、ブルーベリー、プルーン、クコの実といった肝を元気にする食材も定期的に食べましょう。

③は発汗や出血、夜ふかしなど、陰血の不足を助長するような行為を控えて、カシューナッツ、えだまめ、ほうれん草、なつめ、なまこ、にしん、まぐろ、しじみ、鴨肉、牛レバー、豚レバー、アスパラ、おくら、きくらげ、あゆ、牡蠣。卵、ヨーグルトなどを定期的に食べましょう。ただ、まずは早寝を実践するのが一番効果的だと思います。
中医学では、体と心の繋がりを重視し、バランスのとれた生活を推奨しています。イライラを感じた際には、個々の症状や体質に合わせた中医学的アプローチを試してみることが効果的です。

イライラは体の状態でもあるということもお忘れなく。そして夜ふかしや睡眠不足はかなり体と心の余力を削ぐので、できるだけ早寝して心身に余裕を持って日々を過ごすよう心がけてください。

櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
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