こんにちは。気象予報士の今井明子です。
暦の上では立秋を迎えましたが、まだまだ暑い日が続きます。避暑地といえば高原を思い浮かべる人が多いと思いますが、近年では海辺も避暑地といえるかもしれません。…と書くと、「えーっ、うそでしょ?」という声が聞こえてきそうです。「夏といえばギラギラと照りつける太陽、そしてビーチ!」という印象が強く、海といえば暑いところだと思っている人は多いのではないでしょうか。
以前、私が7月下旬に伊勢志摩に旅行に行ったところ、カンカン照りの夏空なのに海辺に設置された温度表示が「25℃」となっており、思わず目を疑いました。というのも、旅行前の首都圏は最高気温が35℃を超えることも珍しくないような猛暑だったからです。しかし、実際に海辺に立つと「あ…確かにこれは25℃かも…」と思いました。照り返しのきついビーチでなければ、真夏の海辺は都市部よりも涼しいのです。
海辺の涼しさの秘密は、風です。昼間は海から陸へ吹く海風が、夜は陸から海へ吹く陸風が吹いています。陸と海の暖まりやすさの違いによって風が吹くのです。
もう少し詳しく風が吹く仕組みを説明しましょう。昼は太陽の光で地面や海面があたためられます。しかし、陸のほうが海よりも早く暖まります。すると、陸の空気はあたためられて上昇し、逆に冷たい海のほうで空気が下降します。海で下降した空気は、地表近くでは陸に向かって移動します。これが海風の正体です。そして夜は昼と逆の現象が起こります。太陽が出ていないと、陸は早く冷えますが、海はなかなか冷えないため、今度は陸から海に向かって風が吹くのです。
では、海風と陸風が交代する時間帯、すなわち朝と夕方はどうなるのでしょうか。この時間帯は、風が吹きません。それが「凪」です。漢字を見れば、「止」という字が入っていて一目瞭然ですね。朝の凪は朝凪、夕方の凪は夕凪と呼ばれます。この季節の凪は、すなわち風が吹かないということなので、とても暑くなります。
なお、海風、陸風は風速数m程度なうえ、海辺でしか吹かず、地表からせいぜい200mくらいの高さまでで起こる小さな現象です。低気圧や台風からの風のほうが強く、水平・垂直ともに規模も大きいため、これらが接近すると海風や陸風は感じられなくなります。天気が崩れていないからこその朝凪や夕凪なのです。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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