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行き合いの空

旬のもの 2024.09.04

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9月に入り、「秋」を感じることが多くなりました。

少しずつ気温が下がって、洋服の袖はだんだんと長くなります。
コスモスやキキョウ、リンドウなど秋の花たちもポコポコと咲きはじめ、夜にはひぐらしや鈴虫の声が盛んに聴こえるようになる。
スーパーでは、夏の間に栄養を蓄えた食材たちが並び、食卓を賑やかにする..。

今年も暑かった夏。乗り越えた自分を労うように、ひとつひとつの移り変わりがじんわりと心に沁み入るようです。

そんななか「空」の様子を眺めることもまた一つ、季節の移り変わりを感じるサインです。

パキッとした夏の入道雲から、少しもやもやした秋のうろこ雲やすじ雲へ。
両方が混在している様子が空にあらわれることを「行き合いの空(ゆきあいのそら)」と言います。

「行き合い」とは、聞いたことがあっても普段使わない言葉。どういう意味なのか気になって、広辞苑で調べてみたらこう書いてありました。

①行き合うこと。また、その時、その所。出合い。
②夏と秋など、隣り合わせの二季にまたがること。また、その頃。
※「広辞苑」の第三版新村出編より引用

「出合い」と「またがること」、なるほどなぁと思いました。
夏から秋へ、パキッとすぐに切り替わるわけじゃない。行き来し合うように、順を追って少しずつ少しずつ変わっていく。

そもそもなぜ、夏と秋の雲は違うのでしょうか。それは、「温度と湿度」が大きく関係しています。
雲は水蒸気を含む空気が上昇し、冷やされることによってできますが、夏は気温も湿度も高い。地面と上空の気温差が大きくなるため、すぐに雲がわきはじめ、むくむくと成長します。
対して、秋になると気温差が小さく湿度も低いため、なかなか雲にならずにぼんやりとした雲になります。

行き合いの空は、人の「こころ」に似ているなぁと思います。
私は文章を書くお仕事をさせてもらっていますが、言葉以上に「こころ」はもっと奥深いもので、表現しきれないことがたくさんあるなと感じています。

たとえば、「悲しい」気持ちのとき。
言葉で書いたり話したりして伝えようとしても、ちょっと違うなぁと感じるときがあります。
そこにはほんのすこしだけ「うれしい」気持ちが混じっていたり、過去の経験が重なって生まれた「悲しい」だったり。あるいは、ホルモンバランスが崩れて起こってしまっていることだったり。
色であらわすとグラデーションのような、白黒はっきりできないこころの動きって、日々たくさん行き交っています。

だからふと見上げた空にあたたかみを感じたり、引き込まれたりするのは、「こころ」の動きが重なったときなのかもしれない。そう思うときがよくあります。

「女心と秋の空」なんてことわざもありますが、空と同じく、人のこころも移ろいゆくもの。
自分の想いをほのかに重ね合わせながら、行き合いの空をたのしみたいと思います。

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高根恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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