こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「こんにゃく」についてのお話です。
一人暮らしを始めた最初の冬、こんにゃくの商品棚の前で、私は迷っていた。
おでんを作ろうとスーパーに寄ったのだが、どのこんにゃくを選んだらいいのか分からずにいた。
板こんにゃくに始まり、結びこんにゃくや玉こんにゃくなど形も様々なものが置いてある。よくある黒色もあれば、白、そして赤色のものもある…。
おでんにこんにゃくは欠かせない。野菜や肉とも違う、あの独特な食感はこれでしか味わえない。おでんに沢山入れて、たんまり食べようと思っていたのだが、たかがこんにゃく、されどこんにゃく。こんなに種類があるのかと、ひとりクラクラしていた。

実家のおでんは、黒の板こんにゃくを三角形にして入れられていた。同じものを作ろうと思ったのだが、板こんにゃくだけでも何個か置いてある。よく見ると「生芋使用」と書かれたものと、そうでないものがあった。
「どう違うのだろう?」と見てみるのだが、よく分からない。生芋こんにゃくの方が、ちょっと値段が高めのようだ。しばらく悩んだ結果「高い方が美味しいこんにゃくに違いない」と安易に考えた私は、生芋こんにゃくを買って家に帰った。
おでんの出汁を取りながら、タネの仕込みをする。こんにゃくを軽く洗って、味が染み込みやすいように、隠し包丁を格子状に入れる。勢い余って包丁を深く入れてしまったところもあるが、自分で食べるものだから良しとしよう。塩を振って少し置いて、臭みやえぐみを取る。そしてお湯でさっとゆがいて下拵えは終了。
こんにゃくは煮崩れしないので、鍋の一番底に敷くのがいいだろう。他の具材も順々に入れて、ゆっくりと煮て、火を止める。次の日の楽しみが完成した。

翌日、おでんの入った鍋をあけると、味の染みたタネたちが出汁から顔を覗かせていた。私のおでんのスタメンは、大根に卵、そしてこんにゃくである。おたまを使って鍋底からこんにゃくを探し出して、さっそく頬張った。隠し包丁のおかげもあって、ほんのり出汁が染み込んでいる。
しかし「あれ?」と少し違和感を覚えた。美味しいのだが、歯応えが思っていたのと違うし、独特な風味もする。

調べてみると、生芋使用のこんにゃくと、そうでないものとでは、作り方に違いがあることが分かった。
生芋使用のものは、こんにゃく芋をそのまますりつぶして作られているそうだ。風味が豊かで、こんにゃく芋本来の風味を味わえるという。弾力があり、歯ごたえもある。
一方、生芋不使用のものは粉こんにゃくと言って、こんにゃく芋を乾燥させて粉末状にしたものを水と混ぜて作られる。生芋こんにゃくよりも、やや風味は控えめで、少し柔らかくて滑らかな食感になるという。
なるほど、母は粉こんにゃくの方を使っていたのだろう。どちらも良いが、実家のおでんを再現するなら、次は別のこんにゃくを試してみようと思ったのだった。

ちなみに、年中手に入るこんにゃくにも、旬があるという。こんにゃく芋は、10月下旬から12月上旬にかけて収穫される。この頃に収穫された新しいこんにゃく芋で作られたこんにゃくは、「新芋」と呼ばれ、みずみずしく弾力のある食感が特徴だという。 寒くなるにつれて、こんにゃく芋の水分が減って、でんぷん質が増加する。これがこんにゃく独特の弾力のある食感を生むそうだ。
寒くなってきて、一層おでんが美味しい季節となった。次にスーパーに行った時には、こんにゃく選びも楽しんでみてはどうだろうか。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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