こんにちは。和菓子文化研究家のせせなおこです。
今年も桜の季節がやってきました。本物の桜はもちろんのこと、和菓子屋さんでも春満開!桜餅や、桜あんの使われたどら焼きに大福、ついつい「桜」の文字に手が伸びてしまいます。
そして、この時期見つけたら買ってしまうのが「桜薯蕷(さくらじょうよ)」です。薯蕷饅頭はつくね芋に米粉、砂糖を混ぜた生地をあんこで包んだおまんじゅうで、しっとりむちっとした生地が特徴です。昔は高貴な人が食べていたおまんじゅうともいわれ、「上用饅頭」と呼ばれることも。そんなわけで、私の中で薯蕷饅頭はちょっと特別な日のおまんじゅう、と位置付けています。
そんな特別な薯蕷饅頭をさらに特別なものにしてくれるのが「桜薯蕷」。薯蕷饅頭の上に桜の花びらがのっていたり、桜のようなピンクの生地だったりと、表現の仕方はお店によって様々ですが、おまんじゅうに春が咲いて、心が軽やかな気持ちになります。
今年見つけたのは、白い生地に桜の花びらの焼印が押してあるものと、ピンクの生地に桜の花びらがのっている2種類の桜薯蕷。ピンクの桜薯蕷は見ているだけでうっとりしてしまうかわいさ。中にはこしあんが入っていました。一方、白い方は桜の焼印がシンプルでかわいいな〜と思い、半分に割ってみると、なんと鮮やかなピンクの桜あんが登場。桜独特の香りがふわり、と広がり、口に入れるとお花見の風景が目に浮かびました。
数年前の桜シーズン、スマホで撮った満開の桜をおばあちゃんに見せると「まぁ、なんてきれいな桜なの。これで1年中お花見ができるね。」と嬉しそうに笑ってくれました。もちろん、私自身もきれいだな、と思って撮った桜でしたが、おばあちゃんのこの感性はなんて美しいんだろう、と言葉にならない気持ちになりました。
和菓子の魅力は季節を感じられること。桜の季節に桜のお菓子を食べるのはもちろん素敵なのですが、異なる季節のお菓子を味わって、その季節を愛おしく思うのもまた「季節を感じられる」和菓子の魅力ではないのかなと思います。桜のシーズンが終わっても、桜の景色を想いながら薯蕷饅頭を食べる時間を大事にしたいものです。

