こんにちは。和菓子文化研究家のせせなおこです。
長い長い夏が終わり、待ちに待った秋!と喜ぶのも束の間、毎年あっという間に冬がやってきます。年々短くなっている秋だからこそ、気候だけでなく、秋らしいものをうまく活用して季節を感じたいものです。そんな時にもってこいなのは、やはり和菓子。和菓子は季節を先取りするのが基本。これからの季節の予告として、本物の季節がより待ち遠しくなるような存在でもあります。
今回の和菓子は、これぞ秋のモチーフ、ともいえる「竜田」。上生菓子には菓銘と呼ばれる特定の意匠につけられる名前があります。その中でも「竜田」は秋を代表する菓銘のひとつ。奈良県にある紅葉の名所「竜田川」にちなんだものです。川面を覆うように舞い散る紅葉の景色は、古くから人々の心をとらえ、多くの和歌にも詠まれてきました。ちなみに料理の「竜田揚げ」も、この竜田川の紅葉に由来しているそうです。
竜田川の紅葉の様子を表している歌はたくさんあるものの、代表的な歌に在原業平の詠んだ
「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 から紅に 水くくるとは」
という歌があります。
中学生の国語の授業で習った百人一首ですが、当時は「昔の人の詠んだ歌をなんで学ぶんだろう?」なんて思っていました。しかし、今となっては、これだけ移り変わっていく世の中で、1000年以上も前の、とても想像もつかないような昔の人と同じ景色を見られることがとても不思議で、愛おしいと思えるようになりました。
菓銘は同じ「竜田」でありながらも、お店によって表現方法が異なるのも和菓子の魅力。紅葉そのものを模した練り切りもあれば、紅葉の焼印を押したもの、川を流れる紅葉の様子を表したものなど、様々な表現に職人さんの個性が光ります。同じ景色を見ても、人それぞれ感じ方が違うもの。他の人の目にはどう映っているのんだろう?和菓子を通じて自分以外の人の感じる紅葉を見られるような気がして、本物の紅葉と同様、和菓子の紅葉も毎年とても楽しみにしている風物詩です。
少し先走りすぎかな?と思いつつも、今年の終わりがうっすらと近づいてくる季節になりました。ついこの前新しい年になったはずなのに、おかしいな?と年々時の流れが早くなってきているのは気のせいでしょうか…。とはいえ、秋を感じずに冬を迎えるわけにはいきません。短いのであれば尚更、心して秋を待ち望みたいと思います!

