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隠元豆いんげんまめ

旬のもの 2025.10.15

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長く続いた暑さがやっと落ち着いて、秋らしさも日に日に深まってきました。秋の実りのニュースを見聞きする機会も増えてきましたね。

旬の実りといえば、秋は完熟した隠元豆を収穫する季節でもあります。

ふくよかに実った畑の「うずら豆」。

海を渡ってやってきた「隠元豆」

隠元豆と聞くと、若鞘を食べるサヤインゲンをイメージするかもしれませんが、今回ご紹介したいのは、完熟した豆を乾燥させて食べる品種のほうです。

隠元豆の原産地はメキシコからグアテマにかけての中南米とされ、現地では紀元前5000年ごろには栽培されていたよう。大航海時代にヨーロッパを経由して世界中へ広がり、日本へは17世紀ごろ、中国を経て伝わったとされます。

隠元という名前は、江戸時代に黄檗宗を伝えた中国の禅僧・隠元隆琦(1592-1673)に由来するもの。隠元が中国から来日した際に、日本にもたらした作物のうちのひとつが、この「隠元豆」であったとか。しかし、実際に当時伝わったのは、フジマメであるともいわれ、現在、隠元豆と呼ばれている豆たちは、のちにアメリカから伝わったという説が有力とされています。

関西ではフジマメを隠元豆と呼び、一般に言う「サヤインゲン」は三度豆と呼び習わしていることも、こうした混乱の元になっているようです。

個性的な模様の「虎豆」。

秋にふさわしい豆の恵み

隠元豆はきわめて品種の多い豆で、さまざまな色や形があります。

赤紫色の「金時豆」は煮豆にすると華やかで、おせち料理や祝いの膳にもよく登場します。白地に茶色の斑点がある「うずら豆」は、見た目がうずらの卵に似ており、煮含めるとふっくら柔らかく、甘納豆としても親しまれています。「虎豆」は北海道特産で、皮が薄く煮くずれしにくいため、煮豆に好まれ、豆そのものの甘みを味わえる高級品種として知られます。これらは、どれもすべて隠元豆の仲間たち。

うずらの卵に似た模様を持つ「うずら豆」。

こうした隠元豆の栽培が、日本で本格的に始まったのは明治時代以降のこと。北海道の開拓が進むと、冷涼な気候でも力強く育つことから隠元豆の栽培が広まりました。

豆の収穫は9〜10月。収穫後の豆は、乾燥、脱粒を経て、新豆が出荷されます。10月は新豆の出回る時期で、産地では乾燥豆を水で戻し、じっくり煮含めた料理が食卓にのぼります。

サヤインゲンの瑞々しさも素晴らしいですが、完熟した乾燥豆は秋の深まりにふさわしい滋味豊かな味わいを届けてくれますね。

北海道のお赤飯には大きな金時豆の甘納豆がゴロゴロ入っています。

郷土料理に根づく豆文化

さまざまな種類のある隠元豆ですが、日本各地に独特の豆食文化が伝わっています。

徳島県では、金時豆入りのお好み焼きが名物で、「豆玉」などの愛称で親しまれています。ほっくりした豆の甘みとソースとが相まって生まれる独特の味わいは絶妙。

北海道では、赤飯に金時豆の甘納豆を混ぜ込んだ「甘納豆の赤飯」が広まり、祝いの席を彩っています。食紅で色付けした赤飯に甘納豆を混ぜ込むという簡単なレシピなので、普段のお赤飯の代わりに作ってみるのもいいかもしれませんね。

地域ごとに独自の食文化を育んできた隠元豆。旬の実りを味わうこの季節、秋の夜長に各地の料理に思いを馳せながら、豆を煮る時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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清絢

食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。

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