今日のお話は、春の七草のひとつ、冬から春先にかけてが旬の「せり」です。
1月7日に一年の無病息災を願って食べる七草粥にも、せりが入っています。
せりの名前は、密集して競り合うように生育することからきています。また、「競り勝つこと」に通じて縁起が良いとされています。
せりは三つ葉、独活(うど)、蕗(ふき)、わさびと同じ日本原産の野菜です。セリ科の一年草で、湿地など水が豊富にある場所に自生しています。『万葉集』にせりを詠んだ歌があることからも、大変歴史が古いことが伺えます。
せりの栽培は江戸時代頃から始まったとされています。川や湧き水を利用して、東京の足立せりや京都の京せりが栽培されるようになりました。江戸時代は、まだ白菜が登場していなかったので、鍋料理の野菜は冬でも収穫できるせりやねぎが使われていました。例えば、江戸の武士達に好まれた軍鶏鍋などに入れられていたようです。武士達は冷えた体を芯から温めながら、せりの持つ独特の爽やかな香りとシャキシャキ感に舌鼓を打っていたのかもしれません。
やがて水田などを利用して、秋田県、茨城県、宮城県、千葉県、島根県など日本各地で栽培は広がっていきました。秋田県のきりたんぽ、宮城県の仙台せり鍋、島根県の松江おでんなどの郷土料理に、せりが使われるようになり、今でも旅行やお取り寄せで味わうことができます。
せりのおすすめの食べ方は、鶏肉、豆腐、椎茸、白ネギのシンプルな鍋、すき焼き、しゃぶしゃぶ、おひたし、天ぷら、茹でて刻んだせりを混ぜたご飯などがあります。色々なせり料理を楽しんでください。
私の思い出は、冬の市場でみんな皆で作ったせりを入れた豚汁です。豚汁の仕上げに、せり担当者からもらった水耕栽培のせり(高知県と大分県では年間を通して水耕栽培のせりを出荷しています)を刻んで入れました。せりの風味が効いていると、皆口を揃えて美味しいと言ってくれました。せりの名脇役のおかげで喜んでもらえて嬉しかったです。
せりの風味には、寒い冬に春の息吹きを感じさせるような暖かさも含まれているような気がします。
せりを味わえること、七草粥の習わし、これからも受け継がれていく心の豊かさを大切にしたいと思います。
今日のレシピは簡単にできる「せりの洋風おじや」です。よかったら作ってみてください。
せりの洋風おじや
材料(2人前)
•せり 約60g
•水 2カップ
•固形ブイヨン ½個
•塩 小さじ½
•白ネギ 約20g(⅓本)
•バター 10g
•白ごはん 約180g(茶碗1杯)
•溶けるチーズ お好みの量
作り方
①せりは水洗いして、茎と葉の部分に切り分けます。
②テフロン加工の深さがあるフライパンか鍋に水を入れて沸騰させます。
③塩を入れて、茎のみ入れて15秒、葉を加えて15秒茹でた後、大きめのボウルの上にザルを置いて湯切りをします。茹で汁は後で使うのでとっておきます。
④同じフライパンか鍋に、バターとみじん切りした白ネギを入れて軽く炒めます。
⑤茹で汁を半量いれて強火にし、沸騰させた後、白ごはんを加えて、優しく混ぜながら火を通します。
⑥汁気が少なくなったら、残りの茹で汁と刻んだせりを入れて、強火のまま優しく混ぜたら火を止めてチーズを加えて軽く混ぜ合わせたら完成です。
☆ポイント
バターのコクと濃厚な味わいが、せりの風味をまろやかにします。
バターの代わりにオリーブオイルでも良いです。せりの風味が際立つ味わいになります。
茹で汁でせりの風味をご飯の粒に含ませます。

川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
