今日の読み物

お買い物

読み物

特集

カート内の商品数:
0
お支払金額合計:
0円(税込)

ウグイス

旬のもの 2026.03.11

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。

「ホー、ホケキョ」

誰もが知っているウグイスのさえずり。おそらく日本の鳥の中で、もっとも知名度が高い声と言っても差し支えないでしょう。まだ肌寒さの残る空気の中でこの声を耳にすると「あー、春が来たなあ」としみじみ思う春を告げる鳥でもあります。今回はそのウグイスのお話です。

まずは、そのウグイスの基本情報から。全長はオスが約16cm、メスは約14cmと一回りほど小ぶりです。一方、体の色は雌雄に差がなく全身が緑がかった褐色の渋い色合い。目をスッと横切る細い黒線が、さりげないアクセントになっています。分布は極東地域が中心で、サハリンや日本、中国東部、台湾などに広がっています。日本国内では、北海道から南西諸島、小笠原諸島に至るまで国土のほぼ全域に分布しており、笹藪など植物が密生した環境を好んで暮らしています。開けた場所よりも、どちらかといえば「隠れ家志向」の強い鳥です。

さて、鳴き声の知名度は超メジャー級でありながら、実際に姿をはっきり見たことがある人は意外と少ないのではないでしょうか。ウグイスはとにかく恥ずかしがり屋で、藪の中からなかなか出てこない鳥。驚くほど大きな声で囀っているにも関わらず、その姿は見ない「声はすれども姿は見えぬ」典型的なタイプなのです。

「梅の花に来ているウグイスを見たことがある」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その鳥はおそらくメジロはないでしょうか。「梅に鶯」という言葉や、緑色をした鴬餅の印象から、鮮やかな緑色のメジロがウグイスと混同されることは少なくありません。実際のウグイスはもっと地味な色合いで、梅の枝先のような目立つ場所にとまることはあまりないのです。

その年の春に初めて聞くウグイスのさえずりは「初音」と呼ばれます。この初音の時期を全国的に集めている研究機関があり、それによると2026年は、1月23日の大阪での記録が最初だったそうです。ウグイスがさえずり始める時期は気温と関係があることが明らかになっていて、概ね南の暖かい地方から始まり、北海道北部が最後だそうですが、大阪が最初だったのはちょっと意外な気がします。

「ホー、ホケキョ」と鳴くのはオスだけです。この声には「求愛」と「縄張り宣言」という二つに意味があります。鳴き始めのころは主に求愛のさえずりです。オスは大きな声で「私は元気に鳴けるオスです。安全な巣作りの場所も確保しました。どうか来てください」とメスに訴えかけています。

やがてカップルが成立しても、オスは鳴くのをやめません。今度はライバルのオスを牽制するためです。鳥にとっての縄張りとは、主に同種のオスから守る範囲を指します。守らなければ、ライバルがメスと交尾し、自分の子ではない雛を育てることになりかねません。そのため、オスは必死にさえずり続け、1日になんと1,000回も鳴くことが! これだけ鳴き続けるために、繁殖期になると喉の皮膚が厚くなって丈夫になり、踏ん張りが効くように脚の筋肉も大きくなることがわかっています。

喉の皮が膨れる

ところで、ウグイスは春だけでなく、8月末までさえずりを聞くことがあります。とくに標高の高い山では、夏休みの終わりになっても「ホー、ホケキョ」が響いてくることがあります。不思議に思って調べてみると、これは繁殖がうまくいかなかったオスが再挑戦のためにさえずっているのだそうです。ウグイスは繁殖に失敗することも少なくなく、なんとかやり直したいオスが、もう一度求愛の声を上げるのです。

最後に、恥ずかしがり屋のウグイスをはっきり観察するコツをお教えしましょう。それは初音から数週間の早い時期に出会うことです。まだメスが来ていない段階では、枝先に出てきてさえずることが比較的あります。そのタイミングなら姿をしっかり見ることができ、写真も撮りやすいでしょう。実際、今回掲載した写真もそのような時期に撮影したものです。滅多にありませんが、この時期には梅の枝先でさえずることもあり、「梅に鶯」を狙うことも可能です。挑戦してみてはいかがでしょうか。

写真提供:柴田佳秀

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

記事一覧

オフィシャルウェブサイト