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西京焼き

旬のもの 2026.05.09

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「西京焼き」についてのお話です。

立夏を過ぎ、日差しがギラギラと強くなってきた。連休の賑わいもひと段落し、日々の慌ただしさが戻ってきたころ。新生活の緊張も重なり、知らず知らずのうちに疲れが出やすい今だからこそ、心と身体を優しく整えてくれる日常のお弁当づくりを大切にしたいものだ。
そんな時、私は優しい甘みが特徴の「西京焼き」を作りたくなる。

京都を代表する伝統的な焼き物料理「西京焼き」になくてはならないのが、その名の由来にもなっている「西京味噌」だ。
かつて明治維新により都が東京へ移った際、「東京」に対して、京都を「西京(さいきょう)」と呼んだことから、京都で作られる白味噌が「西京味噌」として広く知られるようになった。

この西京味噌は、一般的な白味噌に比べても米麹を贅沢に使い、塩分を抑えて作られるため、とろりとした独特の強い甘みが特徴。
冬の温かいお味噌汁や柚子味噌のイメージが強いかもしれないが、実は暑さが増すこの時期の調理においても、非常に心強い味方になってくれる。

作り方は、西京味噌に酒、味醂を加えた味噌床に、魚の切り身を漬け込むだけ。味噌に漬けることで身の水分が適度に抜け、傷みにくくなるのだ。
かつて、海から遠い盆地である京都では、新鮮な魚を手に入れることが難しかった。運ばれてきた魚を腐敗させず、いかに美味しく食べるかという工夫から、味噌に漬け込む技法が発達したという。
養生食としても親しまれていたこの保存の知恵は、お弁当のおかずにぴったり。気温が急上昇する現代の暑い季節にも、とても心強い。

また冷めてもしっとりふっくらしているので、「冷めても美味しい」という安心感は、お弁当作りには嬉しい。
魚の種類によって漬け込み時間を変えるのも料理の楽しみ。春の名残の鰆(さわら)や鯛などの淡白な魚は、味が入りやすいので、2日程度で引き上げると上品に仕上がる。脂の乗った銀鱈や鰤(ぶり)などは脂が味噌を弾きやすいので、3日くらいじっくり漬けておいても味が濃くなりすぎず、美味しく仕上がる。
この時期、美味しそうな鰆を見つけると、多めに買っておいて、味噌床に漬けておくのが私の恒例となっている。

西京焼きの懐は深い。魚だけでなく、鶏肉や豚肉を漬けても間違いなく美味しい。また、アレンジとして粉山椒や辛子、ごまや豆板醤などを少し加えても面白いアクセントになる。
また、豆腐やゆで卵、アボカドやチーズを漬け込めば、夜のひと時を彩るおつまみに。
そして、焼く前に拭った味噌床は捨てずに、ぜひお味噌汁の仕上げに加えてみてほしい。深みのある「コク出し」として、最後のひと口まで味わうことができる。

忙しい日常を回すためのちょっとしたひと工夫で健やかに。そしてその積み重ねが季節を味わう、暮らしの幸せにもなっていくのだろう。
白味噌という知恵を味方につけて、軽やかに夏を迎えたいものだ。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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