今日の読み物

お買い物

読み物

特集

カート内の商品数:
0
お支払金額合計:
0円(税込)

アマツバメ

旬のもの 2026.08.05

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。

夏といえば、やっぱり海ですよね。先日、久しぶりに静岡県・伊豆半島の海岸へ行ってきました。私の場合は、海水浴ではなく、もちろん鳥を見るためで、お目当ては今回紹介するアマツバメです。伊豆半島には、このアマツバメが営巣する有名な磯があって、この鳥を目当てに多くのバードウォッチャーが訪れます。今回の写真はそこで撮影したものなんです。

アマツバメは、全長20cmのスマートな姿の鳥です。いちばんの特徴は先が尖った細長い翼で、飛んでいる姿はまるで鎌のよう。ほぼ全身が黒く、白い腰が目立ちます。オスとメスで色や大きさに違いはありません。

夏鳥として九州以北に渡来し、日本で子育てをします。巣を崖の岩の隙間に作る習性があります。日本では、そのような場所が海岸や高山に多くあるので、この鳥が見られる場所は海岸の岩礁地帯や高山に限られます。

ところがヨーロッパなどにいる近縁種のヨーロッパアマツバメは、教会の塔などの建物で繁殖し、とても身近な鳥として親しまれています。日本でも、近縁種のヒメアマツバメは建物で営巣しますが、アマツバメが建物に営巣した例はありません。しかし、ロシア・サハリンの空港ではアマツバメが営巣しているそうで、もしかしたら、近い将来、日本でも建物で営巣するようになるかもしれません。

アマツバメは、巣で卵をあたためるとき以外はずっと空を飛び続ける鳥です。食べものの昆虫を捕らえるのはもちろん、巣材集め、睡眠、交尾もすべて飛びながら行うのです。驚いたことに、ヨーロッパアマツバメは約10カ月間もまったく休むことなく飛んでいることがわかっています。

また、ツバメと名前にありますが、ツバメの仲間ではありません。分類としてはヨタカに近く、スズメ目のツバメとは類縁関係がかなり遠い鳥なのです。どちらも空を飛ぶことに特化した体へと進化したため、似たような体型になった、いわば“他人のそら似”というわけです。このような進化を収斂(しゅうれん)と言います。

アマツバメは奈良時代から「あま」と呼ばれ、平安時代になって「あまとり」、「あまつばめ」と呼ばれるようになったそうです。雨が降りそうになると、よく飛ぶことからこの名前がついたという説があります。確かに、夏の夕方、雷雲がもくもくと出現し、それを背景に飛ぶアマツバメを見たことがあるので、そんな情景を昔の人も見ていたのかもしれませんね。

一方、アマツバメの英名はSwift(スイフト)と言います。そういえば、アメリカの歌姫であるテイラー・スウィフトさんの姓と同じです。両者には「Swift」という共通点があります。名前が鳥に因んでいたら面白いなと思ったのですが、残念ながらその関係はありませんでした。ただ、両者とも速いという意味があり、人名については、昔のイギリスでは足が速い人のことをSwiftという愛称で呼んだことに因むそうで、鳥のほうも、飛ぶのが速いことから付けられた名前だといいます。

実際のアマツバメは、時速110kmもの速度で飛ぶ超高速飛行の鳥。写真を撮るとボツ写真ばかりになってしまい、その速さを否応なしに実感しました。今回の写真は、その大量のボツ写真の中から、なんとかとらえることができたものなのです。

写真提供:柴田佳秀

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

記事一覧

オフィシャルウェブサイト