こんにちは。気象予報士の今井明子です。
秋真っ盛り。絶好の行楽シーズンですが、朝晩は冷え込むようになりました。
これからは「放射冷却」という言葉を耳にすることも増えてくることでしょう。
放射冷却というのは、物が熱を外に出して冷えることをいいます。
地球は、昼間は太陽からエネルギー(おもに可視光線)を受け取ってあたたまります。その一方で、地球は昼も夜も関係なく、エネルギー(おもに赤外線)を宇宙に向かって出しています。これを放射といいます。太陽から受け取るエネルギーと、地球から放出するエネルギーの量は釣り合っています。
昼は太陽から受け取るエネルギー量が、地球から放出される熱の量よりも多いため、地球の表面があたたまります。そしてその表面と接する空気も暖かくなります。
逆に、夜は太陽からはエネルギーを受け取れないのですが、地球からは変わらず熱が放出されるため、地面が冷え、それに接する空気も冷えていくのです。これが放射冷却です。夜は気温はぐんぐん下がり、日の出の直前で最低気温を記録します。
放射冷却は、晴れて風の少ない日に発生します。風があれば周囲の空気と混ざりやすくなりますし、雲がなければ地球からの熱がどんどん宇宙に逃げていくからです。逆に、雲が出ていると、地球からの熱が雲で跳ね返り、再び地球の方向に向かうため、地面は暖かくなります。
夜に布団をかぶらずに寝ると体が冷えますが、放射冷却はこれと同じ現象です。もし、ここで布団をかぶれば、布団の中に熱がこもってヌクヌクと暖かくなりますよね。ちょうど雲は布団の役割を果たすのです。
これから放射冷却で、地面付近は特に気温が低くなります。特に盆地では、放射冷却によって冷やされた空気がたまり、空気中の水蒸気が水に変化して霧になることがあります。このような霧は放射霧と呼ばれます。
また、気温は地面から150cmのところで測るので、放射冷却が起こると地面付近の気温が地上150cmの気温よりも低くなります。つまり、最低気温が3℃程度と観測されても、地面に近い場所の気温は実際には氷点下になることもあり、霜が降りたり霜柱が立ったりするのです。

今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
