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えり挿すえりさす

季語 2026.02.21

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

春ならではの風景にもさまざまなものがありますが、2月から3月中旬にかけての初春に、河川・湖沼・入江などで行われている「魞(えり)漁」の風景をご存知でしょうか。
主に琵琶湖における風物詩として有名なのですが、これは魚が障害物にぶつかると移動する習性を使って、魚がうまく網にかかるよう誘導する道筋を作る「定置網漁法」のひとつです。

魚が産卵のために岸へ寄ってくるのを狙って、竹や木材でできた「魞(えり)」という細長い棒を水の中に差し込み、迷路のような仕掛けを設置してゆく光景のことを「えり挿す」と言います。
俳句においては、春の訪れを表現する季語として用いられています。

この「魞(魚へんに入る)」という字は、魚が自ら入っていくという漁法の仕組みを表しており、国字といって日本で作られた漢字。
この字が示しているように、「えり挿す」光景は魚を追い立てて捕まえるのではなく、網を張ってそこに自然と魚が迷い込んでくるのを待つ……という、とってものどかな方法です。
そこに生きている魚を根こそぎ捕ってしまうようなこともなく、自然にやさしい漁法としても近年注目されています。

琵琶湖では、主に鮎(アユ)・鮒(フナ)・本諸子(ホンモロコ)といった魚が捕れますが、実に1000年以上前の伝来から今日まで続いているのだそうで、驚くばかりです。
平成18(2006)年には、大津市堅田の魞漁が水産庁の「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選ばれており、私たちの国が誇るべき漁業の風景と言えるのではないでしょうか。
穏やかな水面から突き出ているたくさんの棒には、時折鳥がとまるなどして、その周辺に息づくさまざまな命の関り合いも感じられます。

思えば、私たち人間はいつしか、何かを得るためには手段を選ばず追い求めることが増えたようにも思えます。
自然に生まれた数々の恵みを、命の関り合いの中で自身が生かされていることを感じながら、必要なだけ感謝して捕る(採る)――といった謙虚な方法は、昔に比べたら少なくなってきてしまったのではないでしょうか。
また、魞漁のような「自然が与えてくれるのを待つ」といった選択も、珍しいものと思います。

季節が与えてくれる旬のものを口にすることが、自然のペースを感じながら、自らの体や都合を合わせていくという生き方を教えてくれる気がしてなりません。
自然に体と心を寄り添わせて生きるためにも、季節を感じる言葉「季語」に出合ったら、そこから季節のうつろいを感じる美しい心を育みながら、一日一日を大切に生きてゆきたいものですね。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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