私たちの暮らしには、季節ごとに様々な年中行事が根づいています。民俗学的には、古来より日本では年中行事を通して、不思議な「ちから」を補ってきたと考えられています。今回は、関西学院大学社会学部教授・島村恭則先生に、5月のならわしについて、紐解いていただきました。
ケの日、ハレの日
昔の人は、人知を超えた不思議なちから、霊力が世の中には存在していて、それが「よいこと」をもたらしてくれると考えていました。霊力は毎日の生活の中で段々弱まってくると考えられ、年中行事やハレの日は、こうした霊力を補う機会としての役割を果たしてきました。
異界の存在に触れ、山に入っていったり海に入って行ったりして、異界の霊力をもらうことで、ちからを充填し、日常に戻っていくのです。それは人間の認知的センス・思い込みとも言えるものですが、上手に活用することで、今を生きる私たちも、そこから日々の暮らし方や生き方のヒントを汲み取ることができます。
旧暦と年中行事
今では年中行事は新暦に合わせて行われることが多くなっていますが、本来は旧暦で考えた方が分かりやすいもの。それというのも、年中行事は月の満ち欠けに合わせて行われていたことが多かったからです。
田植えのはじまりと神迎え
旧暦4月は、8日に年中行事が行われやすい月です。これは、仏生会(お釈迦様の誕生日)と重なることにも影響を受けていますが、民俗学的には田植え開始(4月15日頃)に向けた「神迎えの山ごもり」の日であったとする説があります。
なぜ8日に?
4月に限らず、年中行事は8日もしくは7日に行われることが多いのですが、さてどうしてでしょうか。
旧暦を使って生きていた時代、人々は月の満ち欠けに合わせて暮らしていました。満月である15日に向けて時間を刻み、8日(7日)をスタート地点として始めていたようです。
民俗学者である柳田國男によると、当時の人々は、もしかしたら神が先に到着するのではないかと考え、早めに始めていたのだそう。それがいつの間にか15日が忘れられて、スタート地点が残ったのではないかと考えられています。
山のちからを受けとる
4月8日の年中行事には、田植えのはじまりに伴い、神迎えをするという性格がありました。山の神が山から下りてきて、田の神となるのです。
日や内容の詳細は、地域によって様々でしたが、多くは「山ごもり」といって山に入っていって、藤や石楠花(しゃくなげ)、躑躅(つつじ)などを持ち帰っていました。
田に力を与えてくれる精霊やカミを、山で採れる「花」に降ろして迎えていたのです。他にも、4月8日は山にまつわる行事が多く、蔵王山・浅間山・立山・大峰山など、各地の霊山の山開き、山伏の峰入り修行も、この日が目安とされます。
年中行事はたくさんあるので、全部やろうとすると大変ですけれど、一つでも好きな行事を選んで楽しんでみてはいかがでしょうか。選ばなくても良いけれど、どれを選ぶか、というところに文化があり、気持ちが豊かになります。ぜひ、自分で年中行事をデザインして、生き生きと暮らしてみてくださいね。
身近な現象から、民俗学の面白さに迫る
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そのヒントは、民俗学にありました。民俗学の知識を使って、ネット上の美談からLGBTQIA+まで、現在の世の中の各所に潜むいろいろな疑問や話題を取り上げ、豊富な図解とともにわかりやすく解説します。民俗学は現代社会でも使える、生きた学問でした。

島村恭則
民俗学者・関西学院大学社会学部長 教授
東京都杉並区生まれ。兵庫県西宮市在住。好きな季節は、沖縄の「うりずん」。3月下旬から4月下旬にかけての一年でもっとも爽やかな季節のこと。著書に『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)、『昔話の民俗学入門』(創元社)などがある。
