こんにちは。暦生活編集部です。
今日は七十二候の「葭始生(あしはじめてしょうず)」についてのお話です。
先日から在宅勤務が始まりました。
いい天気の日は、やっぱりちょっと遠出したいなと思ってしまいますが、近くの公園に行くだけでもとても気持ちよくて、春の風と匂いを感じることができます。
今年の春は季節を感じる機会がいつもより少ないと思いますが、そんな時だからこそ、暦生活で気軽に季節感を感じていただくことができたらいいなと思っています。
七十二候はまためぐり、「葭始生(あしはじめてしょうず)」になります。
水辺の葦が芽吹きはじめる頃。葦はイネ科の多年草で、夏に背を伸ばし、茎の高さは2〜3メートルまで成長します。秋には淡紫色の穂をつけ、美しく風になびく様子を楽しむことができます。
春に芽吹く葦の若芽は、尖っていてまるで牙のように見えることから、「葦牙(あしかび)」といわれ、春の季語として俳句の世界では親しまれています。葦の角(あしのつの)、葦の錐(あしのきり)とも呼ばれます。
水に恵まれた日本では、古くから水辺に生える葦を屋根や簾(すだれ)、紙や生薬などに活用してきました。稲刈りの後に葦を刈る、その様子は風物詩になっていたそうです。神話にもとづく日本の呼称「葦原の国」は、葦が生い茂っていることが由来とされています。日本人の生活を、ずっと昔から支えてきてくれた植物なのですね。
葦はしばしば「ヨシ」とも呼ばれますが、これは「葦(あし)」が「悪し」に通ずることを避けての呼び方だといわれています。悪しの反対で、良し。面白いですね。
たくさんある呼び名の中に「浪速草(なにわそう)」という名前がありますが、これは水の都である大阪にたくさん生えていたことから、名付けられたといいます。私たちの会社も大阪にあるので、なんだか急に親近感がわきました。
葦は何度倒れても、茎が柔軟なので折れることがなく、また真っ直ぐ上を向いて成長を続けます。今は先の見通しがたたず不安のつきまとう日々ですが、水辺に生える葦のように、私たちも柔軟に折れることなく前を向いて行けたらと思います。
暦生活を運営するようになってから、二十四節気と七十二候を中心にさまざまなことを学ぶ機会ができましたが、自然の移り変わりの中にはたくさんの驚きと感動があると感じています。「心を豊かに」と言うと少し漠然としていますが、確かに感じるものがあります。それらを自分でも確かめるように、少しずつお伝えしていければと思います。
今日も、暦図鑑を開いていただきありがとうございました。
※七十二候(しちじゅうにこう)は、日本の1年を72等分し、季節それぞれのできごとをそのまま名前にした、約5日ごとに移ろう細やかな季節です。
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