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花鳥でめぐる二十四節気/小満しょうまん

二十四節気と七十二候 2025.05.21

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◎小満 5月20~6月4日 「ヤマボウシとクロツグミ」

小満は、万物次第に長じて満ち始めるころ。このあいだまで淡い色をしていた新緑は、ますます色を深めているようです。たしかに草木の葉はしっかりと成長しています。また、花も順に散っては実を結び始めました。

夏鳥の声もさらに賑やかになっています。美声の夏鳥は数多くいますが、いちばんのスターはカッコウでしょうか。ほかにもホトトギス、オオルリなども特徴的な鳴き声です。そんな有名どころをおさえて、最高の喉自慢といえばクロツグミを強く推したいところです。長く複雑なフレーズを何度も繰り返し、森に林にきれいな声を響かせます。

最初この鳥の声を聞いた時は、いったいどんな鳥なのだろうと思ったものでした。今まで聞いたことのない声で「ホヒ~、ポピ~、キョロキョロコキ~」と鳴き続けます。図鑑であれこれ調べて、ようやくその声の正体がクロツグミだと突き止めたときはヨロコビでした。姿はモノトーンで、意外に地味。

そんな夏鳥が鳴き競うころ、白く清らかに咲くのがヤマボウシの花です。木を覆うようにびっしりと揃って咲く姿が印象的。花びらのように見えるのは白い総苞片で、真ん中の緑色の金平糖様が花序。これをお坊さんの頭と見て「山法師」と名付けられたのだとか。頭を白い頭巾で包まれているわけですね。

このお坊さんの頭が結実すると、赤く大きくなります。この実の様子から「山桑」「山桃」の名も。夏の初めに白い花で、また夏の盛りには赤い実でもう一度楽しませてくれます。さらに紅葉の時季になると、美しく色づく葉を見せてくれるのです。文字どおり、サービス精神の旺盛な木といえましょう。

考えてみれば、クロツグミも美しい歌声を披露してこちらに耳の幸福をもたらせてくれます。両者はまさに山のエンターテイナーですね。

これから徐々に雨の季節が近づいてきます。雨に濡れるヤマボウシの花の美しさもまた格別、ということで。

イラスト提供:平野恵理子

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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