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翠雨すいう

旬のもの 2022.05.28

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こんにちは、こんばんは。
ライターの栗田真希です。

翠雨というのは、草木の青葉に降る雨のことです。翠という字を見ると、「翡翠」ということばがふと頭に浮かびます。ヒスイと読むと緑色の宝石に、カワセミと読むと羽が緑色の鳥の意味になります。

そんな綺麗な色を連想させる、翠雨。雨を表すことばは多くありますが、とくに美しさを感じさせてくれます。

新緑の季節には、翠雨の降る景色を見ることも多くなるでしょう。憂うつな雨の日も、すこしだけ楽しみに思えてくるから不思議です。

わたしの住む長崎県波佐見町は、山に囲まれた町です。諸説ありますが、山の「はざま」の土地であることが訛って、当て字で「波佐見」という地名になったといいます。そんな波佐見で見る翠雨は、ひときわ美しいです。

雨が降ると、山から湯気が出ているように、霧が発生します。ゆったりと漂う霧が雨雲とあいまいにつながって、天まで乳白色に包まれます。すると、山々の草木の緑色が引き立つのです。かすんで見える霧のなか、雨で潤ってつやめく草木の青葉が、活き活きと目に飛び込んできます。

どこか神秘的な、木々の青葉の生命力を感じさせる景色です。雨を受け止めた青葉は、雫をいくつもまとって、淡く輝きます。

先日、雨の日に波佐見の山のなかにあるお店にお伺いしたとき。雨で浄化されたかのような澄んだ空気と、静かな雨音、窓の外の青葉の色彩に、こころの芯まで癒やされました。

目を閉じて、雨音に静かに耳を傾けて、深呼吸。まぶたを開けると目の前には、美しい翠雨の世界。

自然の素晴らしさに目を向けて「翠雨」なんてことばを生み出し紡いできた人びとと、永い時を越えて出会ったような気がしました。

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栗田真希

ライター
横浜出身。現在は東京、丸ノ内線の終着駅である方南町でのほほんと暮らす。桜をはじめとした花々や山菜が芽吹く春が好き。カメラを持ってお出かけするのが趣味。OL、コピーライターを経て現在はおもにライターとして活動中。2015年準朝日広告賞受賞、フォトマスター検定準一級の資格を持つ。

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