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揚げびたし

旬のもの 2023.07.11

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「揚げびたし」のお話です。

「野菜いらない?」
暑くなってくると、実家の母からのメールが増える。畑の夏野菜を送ってもいいかと度々連絡がくるのだ。

自分でも畑に挑戦してみたことがある身としては、夏野菜の成長の凄さは、よくよく知っている。収穫しても収穫しても、次見た時には大きくなっているので、実家だけでは食べきれないのだろう。
祖母が手間ひまかけて育ててくれた野菜なのだから、もちろん送ってもらえるなら大変嬉しい。しかし、こちらも冷蔵庫が野菜でいっぱいなことも多い。

そんな時こそ、夏のお助け料理「揚げびたし」の出番である。食材を油で揚げてから、出汁にひたして味を染み込ませる料理だ。揚げることで、一度にたくさん野菜が食べられる。またいろいろな食材が使えるので、冷蔵庫の中をさらえるメニューとしてうってつけだ。

まずは、野菜室の中を見渡してみる。前回母が送ってくれた野菜たちが、まだ少し残っている。茄子にミニトマト、ピーマンやズッキーニなど、夏のレギュラーメンバー。夏野菜は、揚げて美味しいものが多い。

野菜を取り出したら、まずは揚げ油をあたため始める。少し前までは、菜種油のコクが好きで使っていたのだが、よりさっぱり仕上がる米油を今は愛用している。

揚げびたしといえば、やはり茄子だろう。茄子と油の相性はとても良くて美味しい。
茄子は縦半分に切って、火の通りが良くなるように皮に隠し包丁を入れる。輪切りよりは、皮がしっかり感じられる切り方の方が、皮と実の食感のコントラストがあって好みだ。

茄子はほかの野菜より、少し高めの180度強めで揚げている。茄子の皮目から揚げていくのがミソ。油の温度が下がらないよう、鍋にいっぺんに入れすぎないこと。30秒程度でサッと揚げて、あとは余熱で。茄子が重ならないように、ひとつひとつ皮目を上にして置いて油を切るのも大事だ。そして、早めに用意しておいた漬け汁に、そっと漬けると色落ちしにくい。
他の野菜も温度を調節しながら、頃合いを見てサッと揚げていく。

写真提供:庄本彩美

夏に「揚げもの」と聞くと暑そうだが、短時間で揚げられるので、意外とコンロの前に立つ時間は短い。つい油は目の敵にされがちだが、油は暑気あたりで食欲が落ちているときのエネルギー補給としてもおすすめだ。バテにくい体を作るのを助けてくれる。
揚げれば、生や湯がくよりもたくさん食べられるので、夏を乗り切る料理としてぴったりなのだ。

写真提供:庄本彩美

今回はシンプルに出汁に浸すだけ。できた揚げびたしは口に含むと、じゅわ〜っと美味しい。野菜の旨味をそのままにとろけるおいしさは、揚げびたしならではだ。

次は、大根おろしや茗荷など薬味にこだわってもいいだろう。梅干しやナンプラーを入れて味を変えれば飽きがこない。めんつゆやポン酢を使えば、さらにお手軽だ。いろいろアレンジを凝らしながら、楽しめる。
今年の京都の夏も暑くなりそうだが、この揚げびたしで乗り切りたいところだ。

お腹は満足、冷蔵庫はスッキリしたところで、母にメールの返信をする。
「野菜、お願いします!」

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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