今日のお話は「夏みかん」です。
名前の由来は諸説ありますが、昔は「夏橙(なつだいだい)」、前年の実を収穫せずにそのままに残しておくと、今年の実ができることから「夏代々」とも記されていたそうです。「代々」を「よよ」とも読め、近畿地方で中風という病を「よいよい」と呼んでいたことから縁起が良くないとされ、改名して「夏蜜柑(なつみかん)」になったのではないかと言われています。

夏みかんは、約300年前に山口県北部にある青海島(おおみじま)大日比に流れ着いた種を植えたのが始まりだとされています。
それから約100年後、大日比から30kmほど離れた萩に苗が植えられました。
夏みかんは晩秋に色付きますが、酸味が強すぎるため、冬に収穫し倉庫に保存して酸を抜いて熟成させるか、春先から初夏にかけて木の上で熟成させてから収穫します。
当時は収穫時期がわからなかったため、酸味が強く香りが良い夏みかんを酢や柚子の代りに使っていたそうです。
たまたま夏に食べてみたら甘かったため、夏に収穫するようになりました。
江戸時代の終わり頃には、萩の城下町や武家屋敷の白壁や土塀のまわりに多くの夏みかんの木が植えられるようになりました。
明治維新により、禄を失い生活に困窮した武士達を救うべく、新政府の要職についていた小幡高政が、廃墟になった武家屋敷で夏みかんの栽培を始めたそうです。近代化へ進む激動の時代に、先見の明と商才に長けた小幡高政の偉業に感服しますが、柑橘は苗から果実が出来るまでに10年ほどかかるため長い年月を要しますし、武士から農家へと転身した人達も大変な苦労があったのだろうと想像しました。その苦労はやがて実り、甘酸っぱいプチプチとした果肉と爽やかな香りを味わえる夏みかんは、九州、大阪、東京へと出荷されるほど人気が高まり、夏みかんは萩の特産になっていきました。
現在も旧城下町エリアは、5月頃から小さな白い花が咲き甘酸っぱい香りに包まれ、環境省の「かおり風景100選」に選ばれています。

昭和初期に大分県で発見された甘夏は、夏みかんの枝分かれ種です。夏みかんと比べると減酸が早く甘みが強いのが特徴で、全国的に栽培が盛んになっていきました。甘夏からの枝分かれ種の皮や果肉が赤い紅甘夏もあります。

今日は手に入りやすい甘夏を使った夏らしい爽やかで簡単な料理をご紹介します。よかったら作ってみてください。
甘夏と新玉ねぎ和え
〈材料(2人前)〉
•甘夏 1/2個分
•新玉ねぎ 20g
•塩 ひとつまみ
•オリーブオイル大さじ1
〈作り方〉
①甘夏は薄皮をむきます。ボールの上ですると、したたる果汁も余すことなく使えます。
②薄くスライスした新玉ねぎ、塩、オリーブオイルを入れて軽く和えたら完成です。
今回はカジキマグロのグリル焼きにかけました。他の魚やお肉料理にも合います。

甘夏の食べるドレッシング
〈材料(2人前)〉
•甘夏 1/2個分
•新玉ねぎ 20g
A
•塩 小さじ1/2
•砂糖 小さじ1/2
•胡椒 少々
•オリーブオイル大さじ1
•ほぐし蟹缶 50g(またはカニカマ3本)
•コーン缶 大さじ2
〈作り方 〉
①甘夏は薄皮をむいて、果肉を軽くほぐします。
②みじん切りした新玉ねぎとAの材料を入れて混ぜ合わせたら完成です。
※和えものもドレッシングも食べる直前に調味料と混ぜると水っぽくならず良い食感になります。
※ほぐした甘夏をタルタルソース(新玉ねぎとパセリのみじん切り、マヨネーズ、塩胡椒)に混ぜると爽やかなソースになります。


川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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