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三輪素麺

旬のもの 2024.08.04

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8月に入ってから暑さがますます厳しくなりましたね。
こうも暑い日が続くと食べたくなるのが「素麺」です。ツルツルッと喉越しよく口の中に入っていきますし、色々な薬味や野菜と合わせるなどアレンジも効くすぐれもの。
見た目は涼やかでサッと茹でるだけで出来上がるのもうれしくって、年々我が家でもオリジナルの素麺レシピが増えているような気がします。

私は奈良県に住んでいるのでとりわけよく食べるのが「三輪素麺」です。

三輪素麺とは、奈良県桜井市を中心とした三輪地方でつくられている素麺のことをいいます。三輪は素麺発祥の地ともいわれ、奈良の特産品として全国に知られるようになりました。

三輪素麺の歴史をたどると、今から1,200年以上前の奈良時代に遡ります。
桜井市三輪には「大神神社(おおみわじんじゃ)」という日本最古といわれる神社があります。その大神神社の宮司の息子が飢饉と疫病に苦しむ民の救済を祈願したところ、神の啓示を賜り、小麦粉を原料に素麺をつくったのがはじまりだと言い伝えられています。

三輪の土地と三輪山から流れ出る清流が小麦の栽培に適しており、収穫した小麦から素麺がつくられるようになりました。当時の素麺は、綱状になっている麺を二つ折りによじったもので「索餅(さくべい)」と呼ばれていたそうです。
鎌倉時代に入り、中国から麺の製法が伝わり、いまの素麺の形へと変化していきました。江戸時代には三輪は宿場町として栄え、三輪素麺はお伊勢参りの途中で訪れた人々に食べられるようになり、製法とともに全国各地へ広まっていったそうです。

三輪素麺の特徴でよく挙げられるのが「コシ」があることです。
口あたりは滑らかなのに、ほどよく歯ごたえがあるので、食べたときの満足感があります。また、にゅうめんにしても伸びずにおいしさを保ってくれるので、我が家では冬でも素麺が食卓に登場します。

さらに三輪素麺は、伸縮性に優れていて、細い製麺が可能であることも大きな特徴。等級が設けられ、最高等級品の「神杉(かみすぎ)」、極細専用の小麦粉を使った「緒環(おだまき)」、熟成させた「瑞垣(みずがき)」、生産数が一番多い「誉(ほまれ)」などがあり、素麺を巻いている帯には大神神社の鳥居のマークがついています。
夏の贈り物にもぴったりですね。

私は以前、「神杉」を贈り物としていただいて食べたことがありますが想像以上の細さでびっくりしました。
コシはあるけれども、噛む間もなくスッと溶けていってしまうような感覚で、なんだか神聖なものを身体に取り込んだ気分になりました。

私は個人的に三輪地方の山々が連なる景色や、山へ向かって大きな鳥居が佇む景色が大好きなので「三輪素麺」を食べるたびにぼんやりとこの情景が頭に浮かびます。
どこか懐かしさを感じるなかで、ピリッとした空気も伝わってくる。

この地で生まれ、育まれた恵みを、今年もたっぷりいただきながら暑い暑い夏を乗り越えていきたいと思います。

参考

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高根恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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