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ロールキャベツ

旬のもの 2025.03.23

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「ロールキャベツ」についてのお話です。

私の性格は良く言えば、思い立ったらすぐ行動するタイプである。そのせいで、失敗することも度々ある。
初めて作ったロールキャベツも、そうだった。

大学生の私は、ワンルームマンションのキッチンに立ち、母が作ってくれていたロールキャベツを再現しようとしていた。
母のロールキャベツは、鶏ひき肉に玉ねぎ、人参が入ったタネをキャベツで巻き、コンソメで味付けをした素朴な味で、私の好きな料理の一つだった。同じ具材がただ鍋に入っているのと、わざわざキャベツで巻かれているのとでは、美味しさが変わる気がするのは何故なのだろうか。
「ロールキャベツって、ただキャベツで巻くだけでしょう。簡単簡単!」とレシピも見ずに作り始めた。

しかし、キャベツを剥こうとして、さっそくつまずいた。うまく剥がせない。根元の芯に包丁で切れ込みを入れ、親指でぐっと剥がそうとするが、葉がしっかり巻きついていて、ビリビリと破れてしまう。具材を巻くには、大きくて綺麗な葉が欲しい。
何度もトライするものの、破れに破れ、慣れた頃には小さな葉だけになってしった。

ここで立ち止まってレシピを確認すればいいのに、私はそのまま強行突破した。なるべく大きな葉を選んで巻こうとするのだが、うまくいかない。具材をぎゅっと巻きたいが、キャベツの葉が思ったより硬くて、具材との間に隙間が出来てしまう。「ロールキャベツって難しいなぁ」と唸りながら形を整え、鍋に並べて煮詰めてみた。

出来上がったロールキャベツの結果は散々だった。形は崩れるわ、どうにか巻こうとどんどん具材を増やした結果中身は半生、分厚い芯がそのままで食感も悪い。美味しいとは言い難いロールキャベツになってしまった。
「私って、料理下手なのかも…」私は半べそをかきながら、母に電話をした。
話を聞いた母は、クスッと笑いながらコツを教えてくれた。
「キャベツの葉を取りたい時は、水を流しながらだと取りやすいよ。春キャベツの方がふんわり巻かれていて取りやすいんだけど、春野菜はえぐみも強いから、冬キャベツの方が煮込むにはオススメ。あと巻く前に、葉を茹でてから柔くしてね。もし剥くのが難しかったら、いっそ丸ごと茹でてしまうのもいいよ。汁もスープに使えるしね」

「そうか!硬いなら、茹でればいいんじゃん…!丸ごとでもいいのか…」
知れば簡単なことなのに、どうして思い浮かばなかったんだろう。工夫の仕方は色々あるし、どんなアプローチも悪くない。なんというか、料理って遊び心みたいな余白があっていいんだなと、気がついた。
そして電話の最後に、母から的確な一言が。
「あと彩ちゃん、レシピ見ずに作ったでしょ」
ぎくぅ、母にはきっちりバレていたのだった。まず基礎を知り、真似ていくことも重要なのである。

今では、様々な具材を使ってタネを作ることが出来るようになったり、コンソメだけでなくソースを色々変えて楽しんだりすることも出来るようになった。週末の冷蔵庫一掃メニューとして活躍してくれることも。一瞬しか出回らない「ちりめんキャベツ」を見つけたら必ず作るのが毎年の楽しみにもなっている。キャベツに焼き目をつけてから煮込んでみたり、キャベツが小さければ、肉団子とキャベツのスープにしたり、キャベツ焼売に変身させることもお手のものに。
私のロールキャベツは、より自由になった。

キャベツが美味しい季節になると、小さなマンションの台所で首を傾げながら作ったロールキャベツのことを思い出す。このロールキャベツは、料理の面白さと、つい猪突猛進してしまうの私の性格を教えてくれた、思い出深い料理なのである。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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