こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
近頃のバードウォッチング界隈では、鳥を種名ではなく愛称で呼ぶことが流行っています。例えば、ジョウビタキのオスは「ジョビオ」、ルリビタキのメスは「ルリ子」という感じです。さて、今回紹介するアオサギは、なぜか「アオサギ先輩」と呼ばれます。元々はアニメでつけられた愛称だそうですが、その後、電機メーカーのSNS担当者が、「アオサギ先輩」と呼んでポストしたのがきっかけで広まったようです。大きくて立派な風格が「先輩」を思わせるのでしょうね。

先輩と呼ばれるほど風格のあるアオサギ。全長93cm、翼を広げると160cmにもなる大きな鳥で、身近な鳥の中ではトップクラスの巨大さなんです。そんな大きな鳥がわっさわっさと羽ばたいて町の上空を飛ぶことがあり、「とんでもなくでっかい鳥がいた!!」と、興奮気味に私に報告する人がけっこういます。

世界的にはユーラシア大陸の温帯や亜熱帯、アフリカなどに広く分布する鳥です。日本だと、北海道では夏鳥、本州、四国、九州では一年中見られる留鳥、奄美大島以南では寒くなると渡ってくる冬鳥になります。川や湖、海岸などの水辺のほか、水田などの農耕地や都市公園の池など、まあ、水があればどこにでもいる感じです。主な食べものは魚ですが、動くものならばなんでも反応し、時には鳥やネズミなども食べてしまいます。嘴の先が鋭く尖っていてとても頑丈で、大きな魚は一突きで刺して捕らえる名ハンターでもあります。

さて、海外にもいるアオサギ、英名はGrey Heron (灰色のサギ)と呼ばれます。確かに全体的には灰色の鳥なので、そう呼ぶのは合点がいきます。一方、日本では古くは灰色を青と呼び、青みがかった背中の灰色が名前の由来だそうです。アオバトのように緑色の鳥も日本では青と表現しますが、それよりはアオサギは現代でいう青に近い体の色なので、この名前はそれほど違和感がないような気がしますがいかがでしょう。なお、オスとメスで色の違いはありません。ときどき色彩が淡い個体がいますが、それは幼鳥です。

アオサギといえば、2023年に公開された映画「君たちはどう生きるか」に出てくるサギ男のことを思い出す方がいらっしゃるかもしれません。私は、あまたいる鳥の中で、何故、宮崎駿監督はこの鳥を選んだのかとても気になって調べてみました。すると、監督のご自宅の池に、一羽のアオサギが降り立ったことがアイデアの発端だったというのです。

実は、アオサギは近年とても増えている鳥。東京都心部で普通に見られるようになったのは1990年代初めからで、明治神宮の記録を見ると、1992年以前ではたった2例しか記録がありません。この傾向は全国的で、昔だったら、街中の庭の池にアオサギが降り立つことはまず無かったはず。アオサギが増えた背景があったから、この映画にアオサギが登場することになったと私は思うのです。

日本の4月は鳥の子育てシーズン。アオサギはちょうど巣造りの最中か、卵を産み温めている時期です。木の上に枝を使って直径65cmほどの大きな丸い皿状の巣を作り、3~6個の卵を産みます。だいたいゴールデンウィークの頃にヒナが誕生し、約55日で巣立ちを迎えます。

繁殖期を迎えたアオサギは、1年で一番色彩がはっきりし、嘴がピンク色ととても美しくなります。お近くでこの鳥をみかけたら、繁殖期特有のきれいな色になった先輩の姿に注目してやってください。今の時期にしか見られない艶やかな姿ですから。

写真提供:柴田佳秀

柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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