こんにちは。和菓子文化研究家のせせなおこです。
つい最近まで暑い暑い、とクーラーを効かせていたのに、秋は足早に過ぎ去り、あっという間に今年も終わりを迎えようとしています。今までは1年を振り返ると、できなかったことばかり思い浮かび「来年こそは…!」と気合いを入れる季節でした。しかし、ここ数年は、1年を通してゆっくりと過ごせているせいか、1年の楽しかったことを振り返って、来年も楽しく過ごせたらいいな、と以前に比べると穏やかに過ごせるようになってきました。
私にとって「今年はどんな和菓子を食べたか」を振り返ることも1年を振り返るときの楽しみの1つ。食べたかった和菓子がついに食べられた、久しぶりにお気に入りの和菓子を食べられた、それぞれの季節の和菓子をきちんと味わえた、など和菓子を振り返ることでより1年を実感できる気がします。
そんな1年を振り返る時のお供に添えたいのも、やっぱり和菓子。上生菓子のような華やかなものよりも、おばあちゃんが作ってくれるような素朴で温かみのある、決して華やかな見た目ではなくてもほっこりと心が和らぐようなものがおすすめです。
最近お気に入りなのが、東北のおやつ「ゆべし」です。東北の和菓子屋さんでは多くのお店で販売されていますが、他の地域ではなかなか見かけることはありません。実際に私も存在を知ったのも、そして初めて食べたのも大人になってからです。
醤油の香る餅生地でできているゆべし。あんこ入りのものは三方向から生地をつまんで包まれた、三角形の形。あんこなしは小判形。一方、くるみゆべしはたっぷりのくるみが入ったゆべしの生地を四角に切り分けたもの。もちもちとした食感が大好きな私は、初めて口にした瞬間、すぐに虜になってしまいました。
知らない土地の文化に触れた時、その文化が根付いている地域では当たり前のことでも、むしろ当たり前のことこそ、初めての発見はとても不思議な気持ちになるものです。初めてゆべしに出会って以来、馴染みはないはずなのにどこか懐かしく、でもやっぱり新鮮で、とても不思議な感覚を思い出させてくれるお菓子です。
見るからに忙しそうな様子が漢字からも伝わってくる「師走」。あまり走りすぎずに、お気に入りのお菓子とともにゆっくりと休憩しながら、今年1年を振り返ってみてはいかがでしょうか。十分に走り抜けたご自身をやさしい気持ちで労ってあげてくださいね。

