今日のお話は「トマト料理」です。
7月が近づくと、ふとトマト料理が食べたくなります。
けれども、市場で働いていた私には少しひっかかることがあります。トマトは夏だけの野菜でもないのです。春や秋に味の濃い魅力的なトマトと出会うことがあります。
それでも、真っ赤なトマトを見ると、夏を思い出す人も多いのではないでしょうか。太陽の光を浴びて、熟したみずみずしいトマトを、知らず知らずのうちに、夏の記憶と結びつけているのかも知れません。
例えば、「冷やしトマト」は、暑い夏に食べるとほっとします。それは、トマトの味わいだけではないような気がします。
冷たいからかもしれないし、夏の日差しの中での涼感かもしれません。
日本料理では、ガラスなど涼しげなうつわに盛り付けることもあります。
ところで、夏にトマト料理を食べたくなるのは日本だけではないようです。
住んでいたイタリアでも、店先には山積みのトマトがありました。サラダ用は熟す前のもの、ソース用は完熟したものと別々に売られていました。
パンにのせたり、ソースにしたりして、シンプルなトマト料理が多く、夏の食卓の真ん中にありました。
イタリアでも夏は暑いので、さっぱりした前菜が好まれます。バジル、モッツァレラチーズ、トマトのサラダ「カプレーゼ」は、オリーブオイルと塩でいただきます。
もう一つの前菜「ブルスケッタ」は、バゲットの面にニンニクをこすりつけて、刻んだトマトとバジルにオリーブオイルと塩で和えたものをのせます。
働いていたレストランやカフェでも、「ブルスケッタ」はよく出されていたトマト料理です。厨房にはトマトとバジルの香りが広がっていました。
トマトソースにも、忘れられない思い出があります。
夏は北イタリアの小さな山村の避暑地で過ごしていました。トレッキング仲間の家に夕食に招かれた時、トマトの味が引き立ったソースのパスタをいただきました。
玉ねぎは薄切りにして、トマトは裏漉しすることで、やさしい味わいのトマトソースになることを教えてもらいました。
夏になると、トマト料理が気になるのは、味だけではなく、季節の記憶が重なっているからかもしれません。
イタリアで教わったトマトソースも、そんな夏の記憶のひとつです。
よかったら作ってみてください。
ブルスケッタ
材料(作りやすい量)
•トマト 1個(約150〜180g)
•バジル 1枚
•塩 ひとつまみ
•オリーブオイル 大さじ1
•ニンニク 少量
•バゲット 1/2本
作り方
①バゲットを薄くスライスして、軽くトーストします。
②ニンニクは半分に切り、バゲットに軽くこすりつけます。
③ボウルに刻んだトマト、バジル、塩、オリーブオイルを入れて混ぜ合わせます。
④バゲットの上に③をのせます。
☆ポイント
指先をサランラップで巻くと、ニンニクの匂いがほとんどつきません。
バゲットのトースト時間が短いと、パンのやわらかさが残ります。長いときつね色で香ばしくカリッとした食感になります。お好みのトーストにしてください。
できれば召し上がる直前にのせてください。時間が経つにつれて、トマトの水分がパンにしみて食感がベチョとなります。
トマトソース
材料(作りやすい量)
•トマト 2個
•バジル 2枚
•玉ねぎ 1/6個(約60g)
•塩 ひとつまみ
•オリーブオイル 大さじ5
作り方
①トマトはざく切りにして、ミキサーかブレンダーを使って、なめらかな状態になるまで回してください。
②フライパンにオリーブオイル大さじ2と薄切りにした玉ねぎを入れて、弱火でゆっくりと炒めます。
③玉ねぎがしんなりするまで炒めた後、①とオリーブオイル大さじ2を入れて、時々ヘラでかき混ぜながら弱火で10分煮ます。
④刻んだバジルとオリーブオイル大さじ1、塩を入れて、やや中火にして5分煮ます。
☆ポイント
パスタのソースにはお好みですりおろしたチーズをかけてください。肉や魚のソテーなどにも。
また、①の潰したものは、そのままトマトジュースとしていただくほか、ビールと割るのもおすすめです。

川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
