こんにちは。気象予報士の今井明子です。
いよいよ夏本番。太陽はじりじりと照り付け、湿気の多い空気が体にまとわりつくようになってきました。
こうなると、外を歩くのは命がけ。あまりの暑さに頭がぼーっとして幻覚でも見てしまいそうです。

実際に、あるはずのないものが見えることがあります。
太陽がギラギラと照り付ける夏の昼間に出歩くと、アスファルトで舗装された道路の遠くのほうに水たまりが見えることはありませんか?
雨が降ったわけではないのに、なぜ水たまりがあるのでしょう。
しかもその水たまりは、近づくと消えてしまい、もっと遠くに見えるようになります。
まるで水が逃げているかのよう。いやあ……不思議ですよね。

この不思議な水たまりのことを「逃げ水」といいます。逃げ水は実は蜃気楼の一種です。
蜃気楼にはいくつか種類があり、遠くの建物などがのびて見えたり、上の方向に反転したりする「上位蜃気楼」と、下の方向に反転する「下位蜃気楼」があるのですが、逃げ水は「下位蜃気楼」なのです。
つまり、道路の上の景色が反転して、それが路面に映ると、道路に水たまりができたように見えるというわけです。
なぜ逃げ水ができるのでしょうか。
それは、気温の違う空気の層ができるからです。
夏に太陽からじりじりと地面が照らされると、地面はとても暑くなります。特にアスファルトであればなおさらです。
(余談ですが、私は学生時代に、部活の合宿で真夏にアスファルトの上に座ってストレッチしたことがあったのですが、アスファルトが鉄板のように熱くてやけどするかと思いました)

地表が熱せられればそれに接している空気も暖められます。しかし、地表付近の空気の上にある空気の層は地表付近ほどは暖められません(といっても、私たちにとっては十分暑く感じますが)。
こうして、温度の違うふたつの空気の層ができます。
このふたつの空気の層の境目を光がとおるときに、光が曲げられて、遠くのものが下の方向に反転して見えるようになるのです。これが逃げ水ができる仕組みです。

さて、この季節、やはりじりじりと太陽の照り付ける夏の昼間に、アスファルトの上の景色がもやもやと揺れて見えることもあります。これは「陽炎(かげろう)」と呼ばれ、やはり逃げ水と同じ蜃気楼の一種です。
ちなみに、陽炎はろうそくの炎の周りや夏の飛行機のエンジン付近でも見られます。

逃げ水も陽炎も、面白い現象ではあるのですが、これらが見えるような炎天下を歩いていると、意識が遠のいていきそうですね。くれぐれも熱中症には気をつけてお出かけください!

今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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