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日本の色/紅葉色もみじいろ

にっぽんのいろ 2025.11.25

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染織家の吉岡更紗です。朱色、紅、古代紫、葡萄色、藍色、萌黄色…日本では様々な美しい色の名前がつけられてきました。今回は、「紅葉色(もみじいろ)」についてご紹介致します。

紅葉色 写真提供:紫紅社

ようやく秋が深まり、京都を囲む三方の山々を眺めていると、深く濃い緑の中にところどころ赤や黄色に染まった葉の様子をみることができます。葉の色が、次第に黄色や赤に変化することを「こうよう」または「もみじ」と読みますが、楓や櫨の木のように赤く色づくものを「紅葉」、銀杏のように黄色くなるものを「黄葉」と表します。

染司よしおかの工房には、染料として使われる樹がいくつか植えられているのですが、黄檗(きはだ)や胡桃の木はこの時期、少しずつ黄葉していて、日毎に色合いが変化している様子を毎日楽しみにしています。

紅葉 写真提供:紫紅社

『万葉集』には「もみじ」に関する歌が百首以上収められています。

「明日香川 黄葉(もみじば)流る葛城の山の木の葉は今し散るらし」(作者未詳)
「経もなく 緯(ぬき)も定めず娘子らが織る黄葉に霜な降りそね」(大津皇子)

とあるように、『万葉集』では「もみじ」を表す言葉に「黄葉」の漢字が当てられていることがわかります。それは、当時の日本の文化が中国の影響を大きく受けていたため、と言われています。日本には赤く色づく楓や櫨の木が生えていましたが、気候が異なる中国では黄色く変化する木のほうが多いため「黄葉」と表していて、それを日本で倣っていたのだそうです。

紅葉のかさね 写真提供:紫紅社

平安時代に入ると、和洋文化が芽生え日本独自の色彩感となり、赤く色づく葉を「紅葉」と表すようになります。
『古今和歌集』に、

「霜のたて 露のぬきこそ よわからし 山の錦の 織ればかつ散る」(藤原関雄)
「龍田川 もみぢみだれて 流るめり わたらば錦 なかやたえなむ」(よみ人しらず)
「ちはやぶる 神代もきかず 龍田川からくれなゐに 水くくるとは」(在原業平)

という歌が遺されていて、赤く紅葉した葉が霜や露に濡れる様子や、川に流れるさまが、まるで錦のように美しいという表現が多く見られます。瑞々しい緑の葉から次第に黄色または赤に変化を遂げる葉が幾重にも重なる様子が、多彩な色が織り込まれた絹織物のようだ、と喩える当時の人々の豊かな色彩感にうっとりします。

赤には日本茜や蘇芳、黄色には刈安や安柘榴、楊桃などを用いて染めて、その繊細な色合いを表していました。

先日11月8日北野天満宮で「曲水の宴」が執り行われました。平安時代の雅な宴を再現したもので、題に添って男性は漢詩を女性は和歌を詠み上げます。今回「紅葉」の題で和歌を詠むお役目を頂戴し、装束に包まれて次の歌を詠みました。

曲水の宴「紅葉」を題して和歌を詠む 写真提供:吉岡更紗
「秋風に 揺るるもみぢ葉色深く うつるがごとく衣染めてん」(吉岡更紗)

染色家として、美しい紅葉のような色深い彩をうつしたような衣を染めてみたいものです。


11月29日(土)から三鷹市美術ギャラリーにて展覧会「日本の色 染司よしおか 吉岡更紗の仕事」が開催されます。

会期:2025年 11月29日(土) ~ 2026年 2月1日(日) 10:00〜20:00(入館は19:30まで)
会場:三鷹市美術ギャラリー(東京都三鷹市下連雀3-35-1 CORAL(コラル)5階)
交通:
●JR中央線 三鷹駅南口より徒歩1分
※駐車場はCORAL地下駐車場(30分200円) をご利用ください。
※駐輪場はCORAL駐車場の入口横のスロープを上がり2階です。

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吉岡更紗

染織家・染司よしおか6代目
京都市生まれ、京都市在住。紫根、紅花、藍などすべて自然界に存在する染料で古法に倣い染織を行う「染司よしおか」の6代目。東大寺二月堂修二会や薬師寺花会式など古社寺の行事に染和紙を納める仕事もしているため、冬から春にかけてが一番好きな季節。美しい日本の色を生み出すために、日々研鑽を積む。

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