今日のお話は、8月から10月にかけて旬を迎える「かぼす」です。
漢字で「香母酢」と書き、香りの良い酢を当て字にしたとされています。諸説ありますが、江戸時代では蚊よけに刻んだかぼすの皮を使っていたことから、「蚊いぶし」「かぶし」「かぼす」に訛化したのが名前の由来とされています。
かぼすは大分の特産物で、全国生産量の約99%を占めています。江戸時代から栽培が始まったとされ、現在は、夏は露地栽培もの、冬は貯蔵もの、春から初夏にかけてハウス栽培ものと通年出荷されています。
かぼすは、すだち、柚子、レモンなどを含む「香酸柑橘」と呼ばれています。酸味が強く生食には向いていないため、搾り汁や果皮をすりおろしたもの、飾りなどに使います。お料理や飲み物を爽やかな香りと酸味で引き立ててくれます。
また、果皮に含まれている「リモネン」には、リラックス効果があるとされ、果汁の酸味である「クエン酸」は疲労回復の効果があるとされています。
夏の暑さで疲れ気味の時に、旬のかぼすの香りと酸味で元気に過ごしていただきたいと思います。
かぼすの特徴は、すだちやレモンのキリッとした酸味に比べて、ふんわりとしたまろやかな酸味です。
流通している一般的なかぼすの大きさは、すだちより大きくレモンより小さく、青柚子の大きさに似ています。
以前、大分の方からかぼすをいただいた時は、その大きさより1.5倍ほどあり、緑色のオレンジかと思うような大きさに驚いたことがあります。
おすすめの食べ方は、味噌汁にかぼすの搾り汁とおろした皮を入れたもので、味噌と調和した味に感動しました。
他の食べ方は、冷たいそうめんやうどん、焼き魚、揚げ物などにシュッと絞ったり、焼酎やサイダーに搾り汁を入れたりと幅広く料理に使えます。
また、甘い梨や桃などの旬の果物とも合いますので、搾り汁をかけてみてください。
かぼすの絞り方は、かぼすを上向にして絞るとより搾りやすくなりますし、搾り汁が表面の皮をつたって落ちていきますので、皮にある香り成分が移り、より香りを感じさせてくれます。
かぼすの実がかたい時はくし切りにして、包丁で果肉に切れ目を入れることでより搾りやすくなります。
今日は、紫キャベツと紫玉ねぎを使ったイタリアン副菜です。かぼすの酸で鮮やかな紫色に仕上がります。すこし秋を感じさせてくれるような色味です。よかったら作ってみてください。
紫キャベツと紫玉ねぎのかぼす和え
〈材料〉
•かぼすの搾り汁 1個分
•紫キャベツ 100gから130g(小玉約½個分)
•紫玉ねぎ 50gから100g(お好みの量で)
A
•オリーブオイル 大さじ2
•砂糖 小さじ1
•塩 小さじ1/2
•胡椒 少々
〈作り方〉
①紫玉ねぎは千切りにして空気にさらして、辛味を抜きます。
②鍋に水を入れて沸騰したところに、千切りにした紫キャベツを入れて30秒茹でて、ザルにあげて冷まします。
③粗熱がとれたら、キッチンペーパーに①を包んで、手でギュッと絞って水気をしっかり切ります。
④ボールに材料Aとかぼすの搾り汁を入れて、紫キャベツを加えて、紫色になるまで菜箸で混ぜ合わせます。
⑤紫玉ねぎを加えて、混ぜ合わせたら完成です。
〈ポイント〉
•紫キャベツは茹でた後、青色になりますが、かぼすに含まれている酸で紫色に戻ります。
•召し上がる前に、かぼすの搾り汁を少しかけると、より風味が際立ちます。
•保存容器やジップロックに入れて冷蔵庫で翌日まで保存できます。
川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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