今日のお話は里芋の仲間「海老芋」です。
海老芋の歴史は古く、江戸時代の安永年間1700年代後半に、青蓮院宮が長崎から京都に持ち帰った唐芋を、京都御所で仕えていた平野屋権太夫に栽培させたのが始まりだとされています。
海老芋の栽培過程で、「土寄せ」と呼ばれる作業を繰り返すことにより、土の重みで湾曲し、成長するにつれ縞模様ができます。反り返った形と縞模様にちなみ「海老芋」と名前が付けられたそうです。「京芋」とも呼ばれます。
海老芋は親芋に子芋ができ、その子芋から孫芋ができることから子孫繁栄を表します。また、海老は長寿を象徴することから、海老芋は縁起の良い食べ物としてお正月料理に使われています。
冬の京野菜のひとつである海老芋は、現在では主に京都府京田辺市で栽培されていますが、全国生産量のトップは静岡県磐田市です。
立派な形をした子芋は料亭など高級料理屋さんで使われることが多く、小さめの孫芋はスーパーなど一般的なお店に並びます。
海老芋は、ねっとりとして絹のような滑らかな食感で甘みがあります。
煮崩れしにくい特徴があり、煮物にすると海老芋の持ち味を活かすことができます。
江戸時代、海が遠く新鮮な生魚が手に入りにくかった京都では、北海道から運ばれた干し鱈と海老芋を炊き合わせた料理が生まれました。干し鱈の旨味が海老芋に染み込んだ味は逸品です。鱈のゼラチン質は、海老芋の煮崩れから守り、海老芋のアクが鱈の身をやわらかくするとされ、理にかなった調理法でもあります。
他には、揚げ物、蒸し物などの料理にも使われています。
海老芋の皮にはえぐみがあるため、やや厚く剥きます。なんとなく勿体無いような気がしますが、滑らかな食感と味わいを引き出すためです。
アクがあるため、変色しないように水につけると良いです。下処理ではアクやぬめりをとるために、皮を剥いた後、米のとぎ汁で沸騰したら火を弱めて3分ほど煮た後、水を張ったボールに入れて、優しく洗いザルにあげてください。
ただ、この下処理はせずに、そのまま調理した方が海老芋の旨みを味わえるとも言われています。
私が大阪の市場で働いていた頃は、静岡県産の海老芋が入荷すると、いよいよ始まるお正月野菜シーズンに期待と高揚を感じました。また、大阪府富田林市の近くを流れている石川沿い一帯の西板持地区は、水はけの良い土のため、良質の海老芋や里芋が出来ます。地元の寿司屋の大将は近くの海老芋農家から仕入れていて、冬になると、細長く切って茹でた海老芋を麺つゆに浸したり、蒸してつぶした海老芋をあんこと包んだ和菓子など海老芋料理を振る舞ったりしています。
大将との会話から色々な海老芋料理を考案するきっかけとなり、私にとっては海老芋は思い出深い冬野菜になりました。
今日ご紹介するレシピの「海老芋の素揚げ」はJA遠州中央の人達が市場で振る舞ってくれた料理です。モチモチの後にほんのりとねっとりした食感と後から甘みを感じました。
「海老芋とスペアリブの炊き合わせ」は、作るのに1時間ほどかかりますが、材料は少なく作りやすい工程です。良かったら作ってみてください。
海老芋の素揚げ
材料(2人前)
•海老芋 200g
•青のり ひとつまみ
•片栗粉 適量
•揚げ油 適量
•塩 少々
作り方
①海老芋を一口大に切って5分ほど水にさらします。ザルにあげて水気を切り、キッチンペーパーで水気を拭き取った後、ボウルに入れて青のりと軽く混ぜ合わせます。
②片栗粉を軽くつけて6分から7分揚げたら完成です。塩を軽く振ってください。
海老芋とスペアリブの炊き合わせ
材料(2人前)
•海老芋 200g
•米のとぎ汁 適量
•豚スペアリブ 250g
•にんにく 1片
•炭酸水 500ml
•水 適量
A
•しょうゆ 小さじ2
•粉末だしの素 小さじ1
•塩 小さじ1
•砂糖 小さじ1
•みりん 小さじ1
作り方
①鍋にスペアリブ、水を入れて中火にかけます。沸騰後、ザルにあげて軽く水で洗います(スペアリブの下処理)。
②鍋にスペアリブとにんにく、炭酸水を入れて中火にかけます。沸騰後、火を弱めて、時々アクを取りながら、上下に肉を返します(煮込み時間は1時間ほどです)。
③一口大に切った海老芋と米のとぎ汁を入れて中火にかけます。火を弱めて3分煮ます。水を張ったボウルに海老芋を入れて優しく洗ってザルにあげます(海老芋の下処理)。
④スペアリブを40分煮た後、肉がかぶるくらいの水と海老芋とAの調味料を入れて、落とし蓋をしてグツグツと沸騰させないように火の加減を調整しながら20分煮たら完成です。
☆ポイント
落とし蓋の代わりに紙のキッチンシートでも良いです。
肉を炭酸水で煮ると水より早くやわらかくなります。
海老芋は煮崩れしにくい特徴があるので、面取りをせずに煮込んでも形がほとんどくずれません。

川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
