夏になると、私はモッツァレラチーズを買う回数が増えます。
豆腐を買うように。
モッツァレラ作りには引きちぎるように形を整える工程があり、「ちぎる」を意味する「モッツァーレ」が名前の語源です。
親しみを込めて、このあとは”モッツァレラ”と書かせてください。
スーパーに行くと、少しだけ迷って、気づけばカゴに入れてしまう。そんな食材かもしれません。
モッツァレラは、火を使わずに切って盛り付けるだけで、すぐに食卓に並べられます。暑い季節には、その手軽さが何より嬉しく感じます。
真っ赤なトマトとフレッシュバジルで作るカプレーゼは、夏がよく似合う定番の一皿です。
イタリアで料理を学んでいた頃、働いていたカフェの賄いは、ベビーリーフ、生ハム、カプレーゼを挟んだパニーニでした。
自宅の近くに、ナポリから届く水牛のミルクで作られるモッツァレラを扱う小さな食料品店がありました。注文すると、木箱から丸ごとのチーズを取り出してくれる。そんな光景に驚いたことを覚えています。
唐辛子とニンニクのアラビアータソースのパスタの仕上げに、モッツァレラを入れると、スパイシーなソースにミルキーな甘さがアクセントになります。
糸を引くようにのびる、溶けたモッツァレラならではの食感が楽しめます。
私がよく作るのは、パンにモッツァレラをのせて、とろりと溶けるまで焼くだけのトーストです。オリーブオイルをひとまわし、塩をひとつまみ。お好みで蜂蜜を少し垂らしてもよく合います。
忙しい朝でも、あっという間にできあがります。
モッツァレラの中でも少し特別なのが、水牛のミルクで作られるモッツァレラ・ディ・ブーファラです。モッツァレラ・ディ・ブーファラは、水牛ミルクならではの濃厚な甘みとクリーミーな味わいが魅力です。少し特別な日に食卓の華やかさを添えてくれます。
そして、もう一つは、ブッラータです。袋状のモッツァレラの中に、生クリームと細かくしたモッツァレラが入っています。ナイフを入れるとクリームのように溢れ出します。一口食べると、とろけるような甘みが広がります。
今では、イタリアから輸入されたものも、こだわりの食料品店やチーズ専門店などで手に入りやすくなりました。
いつものモッツァレラが日常なら、水牛のミルクで作られるモッツァレラやブッラータは少し特別な日に。
夏に旬を迎える桃と合わせると、季節のご褒美のような一皿になります。
ワインがお好きな方なら、冷えた白ワインやスパークリングワインと合わせて楽しむのもおすすめです。
冷蔵庫から3分で出てくる夏のご褒美。
手間をかけなくても、夏のごはんは軽やかになります。
今日はモッツァレラにしようかな。
冷蔵庫にひとつあるだけで、夏の食卓が少し楽しくなる。そんなモッツァレラとこの夏を過ごしてみませんか。

川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
