漬物男子、田中友規です。
どんなものにも美味しく食べるためのタイミングというものがあります。スイカであればよく冷やしてガブリ、ミカンであればこたつでほっこり。
では無花果はどんな時に食べたい果物でしょうか。
無花果は不思議な果物です。
耽美で唯一無二の芳香を宿し、粒々とした独特の食感でありながら、まるで鈍い色彩の抽象的な油絵のように、それを言葉に表すのが難しい。
また水分が少ない果肉は、一晩中冷蔵庫で冷やしてもいつまでもぬるく、そこに気怠さを感じてしまう。
そんな無花果が美味しいと思ったのは最近のこと。
晩夏に訪ねた明石のイタリア料理店で、桃のかわりに無花果と合わせたモッツァレラの一品は、夏の終わりを告げられたようで、少し寂しさを感じましたが、濃厚な水牛特有のミルクの香りと無花果の甘さがよく合い、妙に腑に落ちる味でした。
それ以来、無花果をすすんで食べることもなかったのですが、このところ、Instagramで無花果がやけにアップされるのが目に止まりました。
何気なく#figのタグを検索してみると、ありとあらゆる国々で、無花果の季節の到来を楽しんでいたのです。
海外でも無花果を食べるんだなぁ・・・
こうなるといつもの通り、無花果の真実を知りたくて、食の歴史の沼へ飛び込んでしまうのですが、今回は一番驚かされたかもしれません。
僕にとってはなんとなく掴みどころのない無花果、
しかしエジプトのピラミッドの壁画にも描かれた世界最古の栽培果樹であり、ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画には禁断の果実として無花果が描かれ、アダムとイブが裸体を隠すために手に取ったのも無花果の葉なのだとか。
古代ローマから数千年も食べられてきた無花果の歴史を清々しいほどに知らなかったのです。
こうなれば料理法も歴史に倣うのが筋。
無花果を使ったイタリア料理を、各方面の専門家に教えてもらい作ることにしました。
まずは珍しい野菜専門の宅配事業「ル・ブタジベ」を手がける川口屋薫氏から
教えてもらった、すだちのカッテージチーズ。
70°ほどに温めた牛乳400ccに、大さじ2杯のすだちを加えて攪拌すると1〜2分で凝固しはじめる。布で漉し、冷やし固めれば完成だ。
漬物用に開発したPicklestoneだが、チーズも適度に脱水できる。
モッツァレラよりもあっさりとしていて、繊細なすだちの酸味がしっかりと感じられるチーズができる。
続いて、京都の出張料理人「パストジェネラーレ」坂辻亮氏に教えてもらったラビオリ生地。リッチに仕上げるため、デュラムセモリナ粉200gに卵黄3つ。
酸味のカッテージチーズ、甘味の無花果、塩味にプロシュットをラビオリで包み込みます。
ソースは生クリームとミント、レモンピールで仕上げました。
ナイフを入れてみると、火を入れた具材が渾然たる姿となり、とろりとした無花果の香りが口の中に広がります。
食材同士が繋がり合い、なだらかに味の構成を整えていく、これは他の果物ではなし得ない仕事です。
知らなかった歴史、知らなかった味。
世界にはまだまだ温故知新が溢れているようです。
みなさんはどんなふうに無花果を楽しんでいますか。
もっと美味しい食べ方をご存知なら教えてくださいね。
田中友規
料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。
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