こんにちは。和菓子文化研究家のせせなおこです。
普段から何気なく食べている和菓子ですが、ふとした時に本当に和菓子の種類は多いなぁ、と改めて感じることがあります。饅頭、と言っても蒸したり、焼いたり、揚げたりと、どんな発想でこの饅頭たちは生まれたのだろうと、謎は深まるばかりです。
特に私が生まれ育った九州には南蛮菓子の影響を強く受けた、全国的にも珍しいお饅頭やお菓子が多く存在しています。昔は大好きな大福やどら焼きがあまり浸透していないことを嘆いていましたが、当たり前に食べていたお菓子が全国では珍しい存在であることを知り、少し誇らしく思えるようにもなりました。そんなおもしろさに気づかせてくれた和菓子の一つが、佐賀の銘菓「松露饅頭(しょうろまんじゅう)」です。
松露饅頭は佐賀県にある唐津(からつ)という地域の銘菓。薄いカステラ生地でこしあんを包んで焼き上げた、まんまるなお饅頭です。たこ焼きのようなビジュアルで、くるくると回しながら焼く焼き方も、たこ焼きそっくり。とても愛おしいお饅頭です。そんな松露饅頭の歴史を辿ると、なんと豊臣秀吉の朝鮮出兵に行きつきます。豊臣秀吉が朝鮮から持って帰ってきたものの一つに、この焼き饅頭があったのだとか。
松露、というのはきのこの名前。唐津には日本三大松原の一つで「虹の松原」と呼ばれる松林があります。ここに4~5月の時期に自生するきのこ、それが松露です。私はこのお饅頭を先に知っていたのですが、初めて松露を見た時、あまりにも松露饅頭に似ていて、とても驚きました。
数年前から韓国のお菓子におもしろさを感じ、渡韓する機会が増えました。韓国にも同じような「호두과자(ホドゥクァジャ)」というお菓子があります。ホドゥはくるみ、クァジャはお菓子を意味します。その名の通り、胡桃が中に入ったお饅頭なのですが、くるみを使うこと以外は松露饅頭にそっくりです。
松露饅頭の歴史には秀吉が朝鮮から持って帰ってきた、と書かれてありますが、韓国に伝わるくるみ菓子は松露饅頭が伝わったという説や、日本人が作り始めたという説も。松露饅頭の他にも、九州には韓国のお菓子ととても似ているものが多く、お互いに影響を受けながらお菓子の文化も発展してきたことがわかります。
当たり前に食べて育ったお菓子たちに、そんなグローバルな背景があっただなんて。韓国のお菓子をおもしろい、と感じるようになったのも今思うと自然な流れだったのかもしれません。
九州の和菓子の歴史を辿ると、ポルトガルやオランダ、中国に韓国と、調べているだけで世界中を旅している気分にさせてくれます。きっとどの和菓子にもそれぞれの物語があるはず。口に運ぶ前の一瞬、あなたはどこからやってきたの?とお菓子にぜひ問いかけてみてください。思いもよらない物語が待っているかもしれません。
写真提供:せせなおこ

