こんにちは。和菓子文化研究家のせせなおこです。
春と夏の境目である「初夏」という時期がとても好きなのですが、そんな境目の曖昧さがどんどん消えつつある最近の季節。今年は5月から熱中症情報を耳にし、そんなに焦ってやってこなくても…と夏本番が始まる前から滅入ってしまいます。
しかし、嘆いていても仕方ない。夏には夏の、とっておきの和菓子たちが季節を彩ってくれます。きらめくあんみつに冷やしぜんざい、体を冷やしがちな夏にぴったりなくず饅頭、そして、今回の主役「麩饅頭」です。夏のお菓子の中で私が特に好きな和菓子です。
小さい頃、初めて生麩を食べたのは夏休みに行った家族旅行でのこと。非日常的な旅館、そして夕飯のお吸い物の中に浮かんでいたのが、かわいらしいお花の形をした生麩でした。当時は生麩という存在を知らなかったので、かまぼこ?と思って口にすると「なんだこのもっちりしたものは!」と、私のもちもちセンサーが反応。お餅や白玉以外にこんなにも、もちもちした食感の食べ物があるなんて。それが大好きな生麩との出会いでした。
その次に出会ったのは串に刺さった生麩の上に味噌が塗られた生麩田楽。生麩田楽には蓬が練り込まれた生麩が使われており、生麩には味のバリエーションがあることも知りました。
そうして一つ一つ生麩の食べ方が増えていく中でついに「麩饅頭」に出会います。こんなに大好きな生麩がお菓子として食べられるだなんて、それはもう大興奮でした。
麩饅頭は、生麩であんこを包み、笹の葉で包んだお菓子。涼しげな見た目から、だんだんと暑くなってくるこの時期に和菓子屋さんに並び始めます。生麩は元々京料理で重宝されていた素材で、京都には今でもお麩や生麩の専門店が存在し、和菓子屋さんだけでなく、そのような専門店でも麩饅頭を購入することができます。
麩饅頭を笹から取り出す時、いつも「この笹を巻く職人さんは本当に器用だなぁ」と思いつつ、この笹をちゃんと解けないと麩饅頭はお預けだ!とミッションを与えられている気分になります。笹の香りがうつった麩饅頭はとても爽やかで、ほんの一瞬の間、暑さを忘れさせてくれます。
今年の夏もきっと暑くなるはず。そんな中でも夏のいいところ探しをしながら、季節を楽しめたらいいなと思います。
写真提供:せせなおこ

