夏の終わりが近づく頃、沖縄では小さな緑の柑橘が収穫の最盛期を迎えます。シークヮーサーです。名前の由来は沖縄の方言の「シー(酢・酸っぱい)」と「クヮーサー(食べさせる)」から来ているといわれ、その名の通り、きゅっとした酸味が持ち味の柑橘です。和名を「ヒラミレモン」といいます。
かつては沖縄の家庭料理にひっそりと寄り添う存在でしたが、今では全国のスーパーなどでも見かけるようになりました。今回は、そんなシークヮーサーの魅力と、沖縄の暮らしに息づく食べ方をご紹介します。
青切りが香る、沖縄の食卓
シークヮーサーは8月後半から9月にかけて、まだ皮が青いうちに収穫される「青切り」が出回ります。この時期の実は、レモンのようにきりっと酸味が強く、果汁を搾って料理の仕上げに垂らすのが沖縄の定番の使い方です。爽やかな香りと豊かな酸味が料理全体の味を引き締め、暑さで疲れた食欲をすっと呼び戻してくれます。魚料理の臭み消しとしても重宝され、家庭の食卓には一年を通してシークヮーサーの小瓶が常備されているというお宅も少なくありません。まさに、沖縄の台所に欠かせない名脇役です。
全国区になった沖縄の恵み
かつては沖縄以外ではあまり知られていなかったシークヮーサーですが、ここ数十年で全国的にその名が広まりました。きっかけのひとつは、果皮や果汁に含まれるノビレチンというポリフェノール。認知機能をサポートする働きが注目され、健康効果を期待した加工品やジュースが盛んに作られるようになりました。今では原液ジュースやポン酢、ドレッシングなど加工品も豊富に流通し、家庭の食卓でも手軽に沖縄の風味を楽しめるようになりました。
産地としては、長寿で有名な沖縄本島北部の大宜味村が特に知られており、この地域の山あいの斜面で古くから育てられてきた歴史があります。
ひんやり楽しむ、シークヮーサーアイス
そして夏ならではの楽しみ方として外せないのが、アイスクリームです。沖縄の街を歩くと、シークヮーサーアイスやシャーベットを扱う店をよく見かけます。爽やかな酸味と甘さのバランスが絶妙で、強い日差しの下で食べるひと口はまさに格別。夏休みの沖縄旅行で初めて味わったという方も多いでしょう。
青い空の下、汗ばんだ肌にひんやりと染み渡るあの味を、今でも夏の思い出として懐かしく語る方も少なくありません。青い果実の酸っぱさを冷たい甘さで包み込んだあの味わい。夏休みが終わりに近づくこの時期、ふと思い出す味覚のひとつではないでしょうか。

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
