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甘酒あまざけ

旬のもの 2026.08.09

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甘酒というと、寒い季節に体を温めてくれる冬の飲み物というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし江戸時代には、甘酒は夏にこそ好んで飲まれる飲み物でした。俳句の世界でも「甘酒」は夏の季語として使われています。

今回は、そんな甘酒にまつわる食文化や栄養価、暑さを乗り切る効果、そしてご家庭で楽しめる作り方や飲み方をご紹介します。

天秤棒で売り歩いた、江戸時代の甘酒売り。(『守貞謾稿』国立国会図書館デジタルコレクション)

江戸の町に響いた「あまーい、あまざけ」

江戸時代、夏になると甘酒売りが天秤棒を担ぎ、「あまーい、あまざけ」などと声を上げながら町を歩きました。冷蔵設備のない暑い盛りにあえて温かい甘酒を飲んだのは、体を内側から温めて汗をかき、暑さで弱った体に栄養を補うためだったのでしょうか。

江戸後期の風俗を記した『守貞謾稿』には、江戸では四季を通じて一杯八文で甘酒が売られていた一方、京都・大坂(大阪)では専ら夏の夜のみ、一杯六文で売られていたと記されており、同じ甘酒でも地域によって親しまれ方が異なっていたようです。宮中では、中世から、甘酒のルーツとされる「醴酒」を夏に作って飲む習慣があったため、特に関西では、夏の飲み物として親しまれてきたと考えられています

俳句の世界でも「甘酒」は夏の季語として詠まれ、庶民の暮らしに根付いた夏の風物詩であったことがうかがえます。冷たいものを飲みたくなる季節にあえて温かい甘酒を選ぶという知恵は、現代の私たちにとっても、学びの多いものではないでしょうか。

麹の力が生み出す、豊かな栄養。

「飲む点滴」ともいわれる栄養価

甘酒は、麹菌の働きによって米のでんぷんが分解され、ぶどう糖やオリゴ糖、必須アミノ酸、ビタミンB群などが豊富に含まれています。点滴の成分に似た栄養構成であることから「飲む点滴」とも呼ばれ、江戸の人々が経験的に知っていた効能が、現代の栄養学によっても裏付けられている形です。

ぶどう糖は素早くエネルギーに変わるため、夏バテで食欲が落ちているときにも比較的口にしやすく、汗とともに失われがちなビタミンやミネラルの補給にも役立ちます。麹由来の甘酒であれば、砂糖を使わなくても、自然な甘みを楽しめる点も魅力です。

ご家庭でも楽しめる、手作りの甘酒。

ご家庭でも手軽に、夏の一杯

家庭で甘酒を楽しむ際は、米麹から作る甘酒がおすすめです。米麹と炊いたお粥、または炊いたご飯を混ぜ、55~60度程度を保ちながら8時間ほど発酵させると、優しい甘さの甘酒ができあがります。炊飯器の保温機能を使えば、特別な道具がなくても手軽に仕込めます。

夏には、よく冷やした甘酒に炭酸水やレモン汁を加えると、さっぱりとした夏らしい一杯になります。すりおろした生姜を添えれば、体が内側から目覚めるような清涼感が加わり、暑さで疲れた体にもやさしく寄り添ってくれるはずです。夏バテ対策の一杯に、作ってみませんか。

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清絢

食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。

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