日本の自然や文化から生まれた美しい伝統色。周りを見渡せば、いろいろな場所に日本の色を見つけることができます。このページでは、Twitterで毎日配信している「にっぽんのいろ」を、月ごとにまとめました。心落ち着く色や、元気が出る色、優しい色、自分に似合う色。ぜひお気に入りの「にっぽんのいろ」を見つけてみてください。
団栗色(どんぐりいろ)
茶色を何層にも塗り重ねたような深い奥行きがあります。その焦茶色は、成熟した団栗の皮の色にちなみます。森や山、木によって色も形も異なる団栗。森の恵みが生み出した多様な色合いが厳かなオーラを放ちます。
照柿色(てりがきいろ)
柔らかくも鮮やかな赤に近い橙色から哀愁が漂います。江戸時代の染色解説書には、赤い土を染料にして染め上げたと記されています。太陽に艶やかに照り輝く、よく熟した柿の実のような色に晩秋の風景が重なります。
淡黄蘗(うすきはだ)
明るくもはかなげな色合いは、まるで秋の夜空に輝く満月のよう。心もち灰がかった柔らかな淡い黄色は、わずかに赤みを含むことによります。ミカン科の「黄蘗」から染められた黄蘗色をさらに淡くしています。
赤丹(あかに)
渋みのある赤色「丹色」の赤みをさらに強めた色です。「丹」は顔料として用いた赤い土のこと。平安時代の祝詞(のりと)に色名が記されているなど、神聖な役割を担うとともに人々の切なる思いを宿していたようです。
紅柿色(べにかきいろ)
柿は奈良時代の『正倉院文書』に記されるほどに、古くから日本人に親しまれてきました。「柿色」「照柿色」「薄柿色」など、柿にちなんだ色名は多くあります。その中でもこの色は熟しきった、特に色の濃い柿のようです。
渋紙色(しぶがみいろ)
赤みがかった茶色が、渋い味わいを醸し出します。その名は、和紙を張り合わせたものに、柿の汁「柿渋(かきしぶ)」を塗った厚紙「渋紙」に由来します。柿の実とは似ても似つかない渋さと深みが魅力的ですね。
栗梅茶(くりうめちゃ)
晩秋の足元を埋め尽くす枯葉のような、赤みの滲む深く沈んだ茶色です。ベースは「栗色の梅染」による栗梅で、その茶色をさらに深くしています。江戸時代、質素倹約のために着物の色を制限された市民の間で流行しました。
柿渋色(かきしぶいろ)
柿の実を搾った液を発酵させ、染料や塗料にしたものを柿渋といいます。その柿渋を紙に用いた「渋紙色」よりも、やや赤みが弱い深茶色を「柿渋色」と呼びます。荒行に耐える山伏も、柿渋を塗った衣装をまとっていたそうです。
洒落柿(しゃれがき)
色づき始めた柿の実の色に近い色合いで、淡い茶色が洒落ています。江戸時代中期以降に流行し、元々は「晒柿(されがき)」だった色名が転じたという説もあります。文人に愛されるなど江戸っ子の粋を感じさせます。
藁色(わらいろ)
柔らかく乾いた薄い黄色です。稲を刈り取った後の藁は、2週間ほど乾燥させて縄やむしろ、米俵などさまざまに利用されます。ほんのり緑がかった色合いは、色褪せる前の青々とした藁の姿を思い起こさせます。
大和柿(やまとがき)
くすみの入った明るい橙色は、江戸時代の流行色の一つです。色名は歌舞伎役者、大和屋の三代目、坂東三津五郎が好んで用いたことに由来し、女性に好まれた色のようです。優しげで陽気な色合いが心を朗らかにしてくれますね。
黄朽葉(きくちば)
平安時代の人々は、朽ちてゆく木の葉に「朽葉四十八色」とも呼ばれる豊富な色合いを見出しました。赤みが差した薄黄色が特徴の黄朽葉は、禁色とされた「黄丹(おうに)」に通じる色として、とりわけ人気を集めました。
竜胆色(りんどういろ)
秋を彩る竜胆の花。その幻想的な色合いから平安時代の作家、清少納言の『枕草子』にも登場するなど、古くから人々の心を魅了してきました。蛍光的な輝きを秘めた青紫からは、まるで異世界の花のような雰囲気が漂います。
橡鼠(つるばみねず)
鼠色の中にわずかに橙色がのぞきます。黒みがかった渋い茶色である橡色をベースに、江戸時代に人気があった鼠色と掛け合わされ、通好みの色合いに変身しました。橙色と鼠色の重なりには古木の肌のような奥深さが潜んでいます。
栗鼠色(くりねずみいろ)
灰がかった暗い茶色からは、渋みよりも温かみを感じます。色名の由来には、馬の代表的な毛色である栗色に鼠色を混ぜたという解釈のほかに、「栗鼠」はリスを指すことから、リスの色合いにちなむという解釈もあるようです。
嵯峨鼠(さがねず)
色名は嵐山を擁する京都の名所、嵯峨にあやかりました。贅沢を禁じられた江戸時代、庶民の着物の色が鼠色、茶色、藍色に制限されたことから生まれた三色のバリエーション「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」の一つです。
赤朽葉(あかくちば)
朽ちてゆく梢の葉の中で、どこまでも紅葉に近い赤寄りの茶色を指します。心を高揚させるような色味は『蜻蛉日記』など、平安文学にもよく登場します。『源氏物語』では、幼い女の子の衣装の色として記されました。
瞑色(めいしょく)
薄暗い夕方のような黒々とした青色をしています。「瞑」は真っ暗闇に近い意味を持っています。夏目漱石は漢詩の中で、日没後の竹藪の薄闇をこの色で表しました。底知れない情念を秘めた幽玄な雰囲気が漂います。
紅掛空色(べにがけそらいろ)
清らかな青色にほのかに赤みの乗った深い青紫色です。その名前は、空色と紅色を別々に染める染め上げ方に由来します。夜が明ける前の、薄闇がこめる青空を想像させるような色合いには、霊妙な奥行きがあります。
安石榴色(ざくろいろ)
ザクロにちなんだ色みをいいます。ただ、その色みには諸説あり、ザクロの花の鮮やかな橙色とするもの、果実の皮の黄みがかった橙色とするもの、果実の種子の鮮烈な赤色とするものなどがあり、定まってはいません。
柿色(かきいろ)
艶やかな赤寄りの橙色は、若すぎず、熟しすぎない、食べごろの柿のようです。柿にちなんだ色は多くありますが、最もオーソドックスな色みです。江戸時代に始まる「柿右衛門様式」と呼ばれる陶磁器にも用いられました。
柑子色(こうじいろ)
温かみのある橙色に思わず心が和みます。柑子とは、日本で古くから栽培されてきたミカンの一種のこと。柑子の果皮に由来し、クチナシと紅花などを合わせて染めると伝えられています。行灯のような優しい色をしています。
濃柿(こいがき)
二十種類ほどある柿にちなんだ色合いの中でも、とりわけ濃く暗い橙茶を指します。古くから、茶器に用いられたり、近松門左衛門の浄瑠璃に登場したりするなど、その風流な色合いが文化人たちに愛されてきました。
晒柿(されがき)
黄みが強いしっとりとした橙色が特徴的です。赤みはそこまで強くなく、柿色に染めた布や紙を晒して薄くなった色という解釈もできそうです。晩秋の頃、柿の梢で木晒しのまま熟し、渋みが薄れた柿の実のようですね。
京緋色(きょうひいろ)
鮮烈な赤である緋色は、奈良時代から使われていた人気の伝統色です。緋色の中でも京都で染められたものは純度が高くあざやかなことから特別に名付けられました。「江戸紫に京緋色」と言われるほど人々にもてはやされました。
小豆鼠(あずきねず)
小豆で作ったぜんざいのような、小豆色に灰色を加えた少しくすんだ色みです。江戸時代中期以降に登場し、尾崎紅葉の『金色夜叉』に描写されるなど明治時代にも親しまれました。着物や和小物に用いられる人気の色です。
左伊多津万色(さいたづまいろ)
左伊多津万は、タデ科の多年草であるイタドリの古い呼び方です。イタドリは『万葉集』にも登場するなど、日本人には古くから身近な植物だったようです。暗めの深緑色が目に優しくも、溌剌とした印象を与えます。
翁茶(おきなちゃ)
老人の白髪の色とされている、白に近いほのかな茶色が上品です。色素がわずかにとどまっているような状態は、白ヤギの体毛にも似ています。「竹取の翁」などで親しみ深い「翁」ですが、この字を冠した色名は珍しいそうです。
橡色(つるばみいろ)
橡は団栗を指します。団栗を砕いた汁で染め、黒色を強めたものを「黒橡(くろつるばみ)」と呼びました。奈良時代は庶民の衣服や喪服に用いられましたが、平安時代には評価が一変し、貴族の色へと瞬く間に変身しました。
灰青(はいあお)
低く垂れ込める雲のような重苦しさの一方で、切なく物悲しい雰囲気が心に響きます。相反する二面性は、陽の青色と陰の灰色を掛け合わせたことによるものかもしれません。着物や和小物、塗料などにも人気の色合いです。
柿茶(かきちゃ)
茶色に含まれている黒みを減らし、柿の実の色に近づけています。錦秋に染まった紅葉の山並みを思わせるような色合いは、まるで一色で秋を代表するかのようです。色の歴史は比較的浅く、登場したのは現代になってからです。
いかがでしたか?10月のにっぽんのいろは、深まる秋の美しい風景を感じさせる色がたくさん。お気に入りの色を見つけられたら、「#にっぽんのいろ」の#タグをつけて、TwitterやInstagramなどで教えていただけたら嬉しいです。
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