日本の自然や文化から生まれた美しい伝統色。周りを見渡せば、いろいろな場所に日本の色を見つけることができます。このページでは、Twitterで毎日配信している「にっぽんのいろ」を、月ごとにまとめました。心落ち着く色や、元気が出る色、優しい色、自分に似合う色。ぜひお気に入りの「にっぽんのいろ」を見つけてみてください。
薄群青(うすぐんじょう)
少し紫を帯びた薄い青色が神秘的です。宝石にも劣らない貴重な鉱物、瑠璃(ラピスラズリ)や藍銅鉱(アズライト)などの原料を細かく砕くことで、群青色をさらに淡くしています。青色の睡蓮のような神々しい雰囲気を放っています。
生成り色(きなりいろ)
赤みが差した淡い色合いに心が和みます。糸や生地本来の色を示すこの色は、高度経済成長期の公害問題を背景に、自然の色合いとして尊ばれました。昨今は環境意識の高まりから、ナチュラルカラーとして注目を集めています。
千歳緑(ちとせみどり)
渋く、深い緑色が長い歳月を思わせます。その色は常緑樹である松のなかでも、樹齢数百年を誇る松「常盤木(ときわぎ)」のような底知れぬ奥行きがあります。生命力みなぎる貫禄ある色に思わず圧倒されてしまいますね。
青袋鼠(せいたいねず)
くすんだ淡い青色が、物静かな気品を感じさせてくれます。江戸時代の染色技法書『染物秘伝』によると「水色に少し墨を加え」とあり、青みは少ないとされています。灰色がかった水色は朝の雲海のような雄大さがあります。
濃卵(こいたまご)
赤みがかった濃い黄色です。卵の黄身が名前の由来ですが、普通の黄身が「卵色」と呼ばれるのに対して、濃い黄身の色を指します。黄身の色は鶏の餌によって異なるそう。濃卵は、どんな餌を食べた鶏から生まれた卵の色なのでしょうか。
紺碧(こんぺき)
紺と碧を掛け合わせた深い青緑色。「紺碧の海」などと描写されるように、文学作品にも多く登場する色です。青と緑が織りなす絶妙な色のさじ加減は、日本の原風景を思わせ、私たちの心によく馴染みます。
象牙色(ぞうげいろ)
象牙のような黄みを帯びたごく薄い茶色です。英名では「アイボリー」といい、柔らかな色合いが日常に溶け込んでいます。室町時代に日本にやってきた「象」と日本人の関係は意外に古く、穏やかで素朴な色に慈愛を感じます。
銀鼠(ぎんねず)
無彩色ながらも上品な、銀色に近い明るい鼠色です。「墨に五彩あり」といわれる水墨画の世界では、薄い順に「清、淡、重、濃、焦」とされ、この色は「淡」にあたります。銀灰色(ぎんかいしょく)や絹鼠(きぬねず)とも呼ばれます。
裏色(うらいろ)
宵闇のような深く渋い青色です。夜具や衣服の裏地の色として使われるなど、穏やかな時を過ごす日常生活にぴったりの色でした。電気のなかった時代、人々はこの色とともに夜の静けさを味わったのでしょう。
深緋(こきひ)
紫がかった深い黄土色をしています。まるで、夕日に染まった西の空のよう。古くから高貴な色として尊ばれ「こきあけ」「ふかひ」「ふかきあけ」などさまざまな読み方を持つ愛された色です。
天青(てんせい)
晴れた日の青空のような、明るい色です。藍と蘇芳(すおう)で染めるとされており、澄んでいるようで、どこか曇りの気配を帯びています。スーッと溶け込むような美しさが、心を晴れやかにしてくれますね。
真珠色(しんじゅいろ)
わずかに灰がかった乳白色をしています。光の当たり方によって変化する多様な光沢や輝きが美しく、文学作品でも「真珠色の瞳」などの表現が重宝されてきました。貝の中で長い間かけて育まれた、神秘的な色に魅了されます。
麦藁色(むぎわらいろ)
黄色と橙色を混ぜた明るい色です。夏に収穫されることから麦藁は夏の季語とされ、昔から俳句や短歌で親しまれてきました。朗らかで優しい色合いは、夏の日差しの中に、ほんの少しの涼しさを与えてくれます。
青褐(あおかち)
藍染の褐色(かちいろ)を黒に近づくまでさらに濃くした色です。奈良時代から伝わる『正倉院文書』の中にも記述が出てくるなど、古くからさまざまな場面で使われました。果てしなく暗い青色は底知れぬ力強さを秘めています。
蒼黒(そうこく)
濃く深い青緑色です。青よりも緑の方が強く色が出ています。暗闇を形容する言葉として「蒼黒(あおぐろ)い」という表現がたびたび文学作品に用いられてきました。落ち着きのある緑色が日が落ちる少し前の山並みを思わせます。
碧緑(へきりょく)
透明度の高い澄んだ緑色です。「碧」は古くから貴石とされてきた石英の結晶体のこと。緑系の緑碧玉(りょくへきぎょく)のようなきらびやかさが貴さを感じさせます。澄んだ緑に囲まれた池の水のように美しい色です。
鴨川鼠(かもがわねず)
京都を流れる「鴨川」が名前の由来です。白と緑を含む灰色で、古都をゆったりと流れる鴨川のように、雅な趣が滲み出ています。最近では、紫がかった鼠色として扱われることも多くなりました。
鉛白(えんぱく)
少し灰色を帯びた白が、真夏の空の入道雲を思わせるようです。塩基性炭酸鉛という鉛の化合物を原料とし、白色の重要な顔料として古来、重宝されてきました。古くは顔に塗る白粉(おしろい)にも用いられたそうです。
乳白色(にゅうはくしょく)
柔らかな白色は、牛乳や乳製品のような優しい色です。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』には、天の川の白色を表現する「乳の流れ」という言葉が登場します。星々の流れにも例えられるなど、とても幻想的な色です。
駱駝色(らくだいろ)
明るめながらも渋い茶色は、ラクダの体毛の色にちなみます。ラクダは江戸時代後期には、珍獣として長崎から日本各地へ紹介されました。今では、お洒落な茶色の代名詞「キャメル」として、多くの人々に親しまれていますね。
白茶(しらちゃ)
淡く優しい茶色。江戸時代後期に、茶人や通人にもてはやされ、粋な色としての地位を確立しました。明治時代には女性の着物の色として定着するなど、しっとりとした温もりを感じる自然な色が長く愛されています。
麴色(こうじいろ)
うっすらと赤みを帯びた淡い黄色。昭和までは日常的だった食材「麹」にちなんだやわらかな色合いです。黄みが強い麦麹や豆麹よりも、白っぽい米麹が色の主体と考えられます。優しい色合いに心が癒やされますね。
鈍色(にびいろ)
薄墨を主体とした淀んだ色です。青みがかったものや茶色っぽいもの、薄いものから濃いものまで、特定の色に定まらず幅広い色を指します。古くから喪に服したり、故人をしのんだりする際に用いられました。
赤銅色(しゃくどういろ)
赤茶けた鈍い色から高級感がみなぎります。赤銅は銅の合金の一種。上等な金と銀を混ぜ合わせており、配合によって黒みがかったり、紫がかったりもします。古くから仏像や刀剣の装飾品にも使われ、上質な歴史ある美しさが漂います。
江戸紫(えどむらさき)
活力あふれる、青みの強い紫色です。江戸時代、赤みの強い京紫に対抗する形でその名を広めました。歌舞伎の人気演目『助六由縁江戸桜』では主人公助六の鉢巻の色に用いられるなど、江戸っ子の粋とプライドが感じられます。
向日葵色(ひまわりいろ)
青空の下に咲き誇る向日葵にちなんだ、温かみのある黄色です。向日葵は江戸時代初期に伝来しましたが、大正時代まで色名は定着しませんでした。眺めていると、晴れやかで爽快な気持ちになりますね。
藍鉄色(あいてついろ)
深く渋い青緑色です。力強く青を重ねた藍色と深く沈んだ鉄色を混ぜることから生み出されました。江戸時代を代表する人気色です。掛け合わせによって青寄りにも緑寄りにもなる、夏の森のような美しい色です。
砂色(すないろ)
比較的新しい色で、さまざまな色の幅があります。白っぽいもの、茶色っぽいもの、赤みがかったもの、濡れて黒みがかったものなどがあり、地名や状況を添えてその色合いを変化させています。
梨子色(なしいろ)
梨の果実にちなんだ、渋くも甘みのある穏やかな黄色。梨が日本に伝わったのははるか昔のこと。弥生時代から大切に育まれ、日本の食文化にもしっかりと定着しました。たわわに実った梨の瑞々しさが口に広がるようですね。
露草色(つゆくさいろ)
美しく可憐な水色は、夏の早朝に咲く露草の花の色を指しています。露草の花や葉の汁を生地に擦り付けて染色します。擦り付けるだけなので色落ちしやすいこともあり、その可憐な美しさは、はかさの裏返しのようでもあります。
撫子色(なでしこいろ)
繊細で凛とした佇まいの撫子のように、澄んだ薄紫色をしています。秋の七草の一つである撫子は、その美しさから古来、特別に愛でられてきました。花言葉は「純粋な愛」。その姿にふさわしい花言葉です。
いかがでしたか?8月のにっぽんのいろは、夏の盛りを感じさせる色がたくさん。お気に入りの色を見つけられたら、「#にっぽんのいろ」の#タグをつけて、TwitterやInstagramなどで教えていただけたら嬉しいです。
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